角川新書 揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義

著者名：鎌田浩毅【著者】

KADOKAWA（2022/10発売）

• ISBN：9784040824215

内容説明

（章立てと主な項目）
第一章　日本は「大地変動の時代」に突入　
「海の地震」と「陸の地震」／正断層と逆断層／日本列島で地震が起きない場所はない／変動期は今後も続く

第二章　2035プラスマイナス5年、南海トラフ巨大地震の激甚さ
なぜ2030から40年の発生を予測できるのか／津波は「ビッグウェーブ」ではない／根室沖巨大地震にも注意を

第三章　20の火山がスタンバイ状態　
巨大地震の後には噴火が／「3・11」直後から増えたスタンバイ状態の火山／噴火の三つのモデル／富士山噴火が南海トラフ巨大地震と連動したら

第四章　富士山噴火をシミュレートする　
（1）火山灰　
（2）溶岩流　
（3）噴石と火山弾　
（4）火砕流　
（5）泥流　

第五章　地球温暖化は自明でない　
「異常気象」の「異常」は人間にとっての異常／地球は氷期に向かっている／温暖化は自明ではない／異常気象と偏西風／地球のバランス・システム「地球惑星システム」

第六章　減災の意識を持つ　
知識は命を救う／指示待ちではなく自発的になるには／正常性バイアスを知る／「空振り」を受け入れる姿勢を持つ／個別「ハザードマップ」の重要性を知る

第七章　ポストGAFAを見据えて　――必要となる思考、知識、教養
戦略的な勉強を／知識、アウトプット、教養のサイクル／好きなことより、できること／人生で出くわす「偶然」を楽しむ／スキマにこそ醍醐味が／京都大学の教育法／難しい本は書いた人が悪い／時間を4つに分ける／読書はもっとも効率のいい勉強の手段

第八章　地球46億年の命をつなぐ　
「長尺の目」で見る、ということ／ユクスキュルが唱えた「環世界」／アトランティス大陸は実在した？／大噴火は文明を消滅させる／地球科学的な時間と空間を

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[trazom]

前半の地球科学に関する振返りでは、専門が火山学であるだけに、地震の陰で忘れがちな火山災害に対する警鐘が卓越している。後半では先生の熱い思いが炸裂。目先の現象（地球温暖化、異常気象等）に一喜一憂しない「長尺の目」の大切さ、サブシステム（気圏・水圏・岩石圏等）を総合化した「地球惑星システム」のように動的で分野横断的な考え方の大切さを説き、地球の資源を大量消費する「ストック型文明」から「フロー型文明」へと主張する。地球科学の「アウトリーチ」に取組み「科学の伝道師」を自任する鎌田先生の魂のこもった最終講義である。

2022/12/20

[まーくん]

地味な地学を京大一般教養課程の人気NO.1科目にされた鎌田教授の2021年3月に行われた最終講義をまとめたもの。最終講義では触れられなかった地球温暖化などについても書き加えてある。最終講義はYouTubeで見ることが出来る。その地球科学や防災にかける情熱が爆発する迫力の講義。地球科学に興味のある方は是非。お薦めです。先生は旧通産省地質調査所で豊肥地区（大分）の地熱資源調査などのフィールドワークに従事された後、京大教授に転じられ専門の火山研究の他、防災・減災の一般への普及いわゆるアウトリーチに力を入れらた⇒

2023/03/19

[KAZOO]

鎌田先生の京都大学の最終講義をまとめたものです。普通最終講義というとご自分の今までの業績などを振り返ったりすることが多いのですが、ここでは今の日本における地震などについての説明が非常にわかりやすく説明されています。地学という授業は今までは地味な感じでしたが、2011年以降非常に脚光を浴びています。地震ばかりではなく気候についても興味が大きくなっています。それを鎌田先生は時事ニュースの池上彰先生と同じように一般向けにしてくれました。

2023/06/09

[やいっち]

同氏の著は、『地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために』に次いで二冊目か。後者については、巨大地震や噴火の危機に鑑み、高校で物理学などと併せた総合学科として地学をこそ必修にすべきという感想を書いた。著者は、日本は「大地変動の時代」に突入と真っ先に説いている。富士山を含めた20の火山がスタンバイ状態だとも。

2023/05/22

[ルピナスさん]

京大地球科学教授の鎌田浩毅氏の最終講義。「昔を振り返っている場合じゃないんです。これから日本列島は大変なんですからね」と語られる、日本が向き合うべき地震や火山の問題は、日本に住む限り何処にも安全な場所はないのだという事実の羅列で、ページを捲るのが辛い程。ところが段々と肝が据わってきて、減災の意識がビシッと掻き立てられて来る。そして、鎌田氏からの「長尺の目」で物事を見て暮らしの中に地球科学的な時間とゆとりを取り入れ、豊かに生きようとの結びに胸が熱くなり、改めて私達が地球上に住む生物の一つなのだと気付かされる

2023/04/14