内容説明
楳図かずおの作品に通底する恐怖・子ども・母といったモチーフを主題論・作品論・表現論・文献学を総合して読み解き、恐怖マンガの巨匠と称され、多くのマンガ家たちからの尊敬を集めながらも、一面的に批評されがちな楳図作品の評価をくつがえす大著。
目次
はじめに――楳図かずおと世界の秘密
第1章 楳図かずおの恐怖概念
1 「恐怖マンガ」成立以前(1)――民俗性・怪奇性
2 「恐怖マンガ」成立以前(2)――幻想性
3 「恐怖マンガ」成立以前(3)――統合
4 恐怖マンガ「口が耳までさける時」の恐怖と怪異
5 恐怖モチーフ変遷説の再検討
6 楳図かずおの認識論――恐怖とギャグの同質性
7 《楳図神学》の存在論
第2章 わたしは真悟、内在する高度
1 視覚体験としての高度(1)――東京タワー
2 キカイからニンゲンへ(1)――内在的な平面
3 視覚体験としての高度(2)――岩のドーム
4 キカイからニンゲンへ(2)――ロボットの存在論
5 ナレーションが仮想する未来の一点
第3章 子どもと暴力――「子供は遊んでばかりいたのかな?」
1 『鉄コン筋クリート』における子どもと暴力
2 暴力と他者
3 言葉の啓示的機能
4 子どもの隷属と自立
5 「Rojin」――動的な視点変化
6 「子供は遊んでばかりいたのかな?」
第4章 洗礼、その身体と記憶
1 身体改造の系譜
2 ストーリーの破綻や亀裂
3 破綻はどこにあるのか(1)――日次のミス
4 破綻はどこにあるのか(2)――鏡像の混乱
5 テクストの二重性(1)――移植文脈と妄想文脈
6 テクストの二重性(2)――破綻と見なされる原因
7 最大の問題、記憶(1)――公然の秘密説
8 最大の問題、記憶(2)――メビウス的な架空の起源
9 母と娘の同一性、および和解について
第5章 ぬばたまの夢やは実在を思はする神の左手悪魔の右手――楳図かずおと世界の創造
1 観念と実在の対立のなかで
2 危機、あっけなく去る危機
3 稚拙で自己中心的な予定調和
4 夢のリアリティー、二つの可能性
5 夢見ているのは誰なのか
6 おぞましい子どもたち
7 ぬばたまの絵本、フィクションと夢
8 プラトニズムとその権化、影亡者
第6章 タマミの御霊――『赤んぼ少女』と鎮魂の問題
1 諸本について
2 タマミはモンスターである――誘導される読解
3 タマミは悪魔である――かたちとこころ
4 ホラー的展開の本質(1)――進行形と完了形
5 ホラー的展開の本質(2)――現実と幻覚の境界
6 十分な理由(1)――「タマミは女の子です」
7 十分な理由(2)――秘密、知ることの衝撃
8 本作における差別的契機――家族について、作者について
9 ネガティブな気持ちを乗り越えていくこと
10 完璧な子ども、聖なる暴力
11 鎮魂のかたち――象徴化と個体化
第7章 楳図かずおのコマ割り理論
1 マクラウドのコマ割り理論
2 夏目房之介のコマ割り理論
3 画面意識の実例――石森章太郎
4 峠あかねのコマ割り理論
5 楳図かずおと反復型
6 楳図自身によるコマ割り理論
7 画面意識の実際――楳図かずお
第8章 マンガにおける二つの省略――マンガ表現論の構造
1 コマ割りによる運動表現
2 コマ分類とショットの切り替え
3 メッツによる映画の大連辞分類
ほか
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