内容説明
《切り裂きジャックを〝超えた〟男を追え!》
医師の仮面を被った悪辣な「紳士」はいかにして次々と女性を殺害し、逃げつづけられたのか。
歪んだ自己顕示欲に塗れた連続毒殺魔と失態が続くロンドン警視庁の攻防を描いた迫真のドキュメント。
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19世紀末のロンドン、切り裂きジャックの凶行(5名殺害)から間もなく、それを上回る9名の女性たちを手にかけた男が現れた……。
──〝ランベスの毒殺魔〟トーマス・ニール・クリーム。
ストリキニーネによる毒殺、中絶手術での殺害、愛人と共謀した夫殺し。
女性蔑視、毒薬への信奉、強烈な承認欲求が生んだ恐るべき「墮胎医」「脅迫者」「性の偏執狂」の本性を暴く。
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「医師が悪の道に走ると最悪の犯罪者になる傾向がある。なにしろ度胸もあり、知識にも事欠かないからね」
──シャーロック・ホームズ(コナン・ドイル『まだらの紐』より)
シルクハットをかぶり、作り笑いを浮かべた邪悪なまなざしの謎めいた人物。
クリームはヴィクトリア期の典型的な悪役像である。
切り裂きならぬ、毒盛りジャック。ヴィクトリア期版ハイド氏。
人の姿をした邪悪と堕落の象徴。(エピローグより)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
120
切り裂きジャックの衝撃さめやらぬ19世紀末ロンドンで、毒殺魔の医師が多くの女を手にかけていたとは。警察を嘲弄しながら逃げ切ったジャックに対し、最後は死刑になったクリーム医師は軽視されてきたようだ。しかし殺人履歴や半生からは、後世の毒殺者グレアム・ヤングに通じる強烈な承認欲求と支配欲が見えてくる。気に入らぬ相手に毒を盛る優越感に浸り、生命を支配する快感に打ち震えているのだ。だからクリームもヤングも疑われるとわかっていても、犯行をほのめかさずにはおれなかった。権力者になる夢を歪んだ形で実現したとは言い過ぎか。2022/11/21
星落秋風五丈原
28
1860年、アイルランドの木材業を営む裕福な家の息子に生まれたトマス・ニール・クリームは当時最先端の医療技術を学んで医師国家試験に合格。クロロホルム中毒で死亡した妊婦の重要参考人として取り調べられるが決定的な証拠がなく無罪。カナダを去り、シカゴに渡ったクリームは4件の殺人罪でイリノイ州立刑務所、通称所リエットに収監されるが、父親が有力者で恩赦が出たため、10年で刑期を終えて1891年出所。本書はここから始まる。彼が出所した時、アメリカでは既に採用されていたベルティヨン式人体測定法が採用される。 2023/06/29
ミノムシlove
10
お粗末な犯罪者。表紙写真を見るといかにも英国紳士然とした風貌であるが、その実、猥談好きで見栄っ張りの低俗な人物だったらしい。人に毒を飲ませる手口で何人もの女性を手に掛けたが、苦しんでいる様子を眺めるでもない。一体何に魅入られていたのか理解できない点が不気味だ。そして、その罪を他人になすりつけるのが常套手段で、筆跡鑑定でばれようがその辺は平気らしい。切り裂きジャックと同一人物ではないかとの推理もあった様だが、その線は無いと明言できるだろう。※他人から貰った薬を飲まずに死を免れた人もいた。危機意識は身を救う。2023/04/03
turutaka
3
テーマは面白いし、この時代、ようやく科学的手法を取り入れた警察の捜査方法など知識も満たされる。 たが、いかんせん冗長で訳もそれほど良くない。大変疲れる一冊であった。2023/07/31
Ta283
1
切り裂きジャックレベルの殺人犯の話2024/03/12