内容説明
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さて,中世イギリスの森のアウトローといえば,シャーウッドの森に愉快な仲間と暮らすロビン・フッドを思い浮かべる読者は多いのではないだろうか。「金持ちから金銭を奪い取って,貧しいものに与える」というロビン・フッドのイメージは後世につくりあげられたもので,本来のものではない。そう,この物語をひもときながら,変幻自在のロビン・フッドの多様な姿をさぐってみたい。それにしても,森と人間のかかわりは多様であり,時代の経過とともにさまざまな変貌を遂げてきた。本書では,そのごく一部にすぎないが,いくつかのルートをたどって歴史の中の森を散策することにしよう
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
64
ピーターラビットは穴ウサギ アリスのお茶会のは野兎。 穴ウサギは外来種で11~12世紀位の文献から登場。 中世では珍味で高級品。 所々とても興味深い話が出てくる。2022/09/12
NAO
58
ロビン・フッドは王の御狩場である森に勝手に住み、王の物である鹿を倒していたアウトロー。だが、当時は権力を笠に着た州長官や修道院長の横暴に目に余るものがあり、ロビン・フッドの活躍のほとんどはこの州長官や修道院長を懲らしめることにあった。ロビン・フッドのモデルとなる人物は何人かいるようだが、逆に、ロビン・フッドの話がすでに有名になっていたためよく似た名前で呼ばれたアウトローもいたようだ。だが、ロビン・フッドは王の御狩場の森に住んでいるとはっきり設定されているため、彼の物語はイギリスに御狩場が制定された後の⇒2022/08/26
組織液
12
中世イングランドの森と人間の関わりについて、ロビン・フッド伝説や森の資源の活用、王権、入会地などさまざまな側面から説明されている本です。ロビン・フッドといえばアウトローとして有名ですが、同じくアウトロー物語のガリメン物語も、決して革命的な側面があったわけではないと言うのは重要な指摘に思えました。日本の一揆もそんな感じでしたね。また中世での森があらゆる資源の供給地になっていたことを強く実感しました。イースト・アングリアの穴兎や、ディーンの森が支えた製鉄業など、興味深い事例がとても多かったです。2023/08/15
人生ゴルディアス
6
もうちょっとロビン・フッドは実在の人物で感があってもよかったんじゃなかろうか…! 最初から、いませんよ、架空の人物ですよ感がすごくて、誠実なのかもしれないけど、わくわく感が……。ロビンフッドの話は半分で、残りは王権と森の利用権等の話。鹿の保護、兎の種類、木材の種類と利用法などちょくちょく。ロイヤル・オークって時計で聞いたことあったけど、王が敗戦で逃げるときに隠れた木がオークで、王政復古してからオークの木を称える祭りになったことにちなんでるようだ。写真も豊富でよかったです。2023/01/02
ノルノル
5
著者は1953年生まれ、東北公益文科大学名誉教授。中世イギリス史専門。学部早稲田教育で院は明治の西洋史というのは、この世代ではちと珍しいのでは。中世イングランドの森と人の関係史入門。ロビン・フッドが前面に出ているが、森と王権、御料林、猟園(パーク)、フォレスト法、王と狩猟(鹿狩)といったテーマの断章という感じ。個人的にはイングランドの鹿の生態と樹種について、なぜと思っていたことが歴史的経緯によって明らかにされていたことがわかって勉強になった。参考文献も良。2022/05/13