内容説明
夢の中では間抜けな“蜥蜴のビル”になってしまう大学院生・井森建。彼は郷里に帰省して小学校時代の同窓会に参加する予定だったが、駅前の食堂で気絶してしまう。そして失神中に見た夢の中で、活発な少年ピーター・パンと心優しい少女ウェンディ、妖精ティンカー・ベルらに遭遇し、ネヴァーランドと呼ばれる島へ行くことになる。だが、ピーターは持ち前の残酷さで、敵である海賊のみならず、己の仲間である幼い“迷子たち”ですらカジュアル感覚で殺害する、根っからの殺人鬼であった。そんなピーターの魔手は、彼を慕うティンカー・ベルにまで迫り……『アリス殺し』シリーズ第4弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おうつき
28
シリーズ4作目。原作のピーターパンは残虐な一面を持っているというのはどこかで聞いたことがあるが、想像以上にヤバイ奴として描かれていて笑ってしまった。とぼけた会話を繰り広げるビルとの相性は抜群で、これまで以上に会話の空気感が楽しかった。ミステリ的な仕掛けもこの世界観ならでは(というよりこの世界観でしか通用しない)もので、意表を突かれた。今後の構造があったことを知ると、やはり続きを読めないことが寂しくなってしまった。2023/04/02
こゆ
26
年内最後の一冊は友人からの借り本。メルヘン殺し最新刊は、ピーターパンに出てくるティンカーベル。シリーズ毎度のことだけど、知っているようであまり知らない物語。このピーターパンはあの蜥蜴のビルよりおバカなのに、倫理観がぶっとんだ殺人鬼。それはどうやら原作通りなのだとか。地球(井森)側がクローズドサークルなのも珍しい。アーヴァタールにはかなり注意してたつもりだけどまたもしてやられた。苦手な痛々しくグロい描写が今作でも炸裂。最後のループはあっち側の人が可哀想すぎる…。ビル達の進まない会話に苛々する時もあるけど、→2023/12/31
二葉
23
まんまと騙された!ティンカー・ベルを殺したのは〇〇だったんだね。唐突な熊の襲撃がラストの伏線だったんだね。2023/05/02
活字スキー
20
【「ピーター……悪ふざけは……なしって……言ったで……しょ」「悪ふざけなんかじゃない。本気だ。本気で殺すつもりってことだ」】揺るぎなく空気の読めないトンチキにして愛すべき蜥蜴のビルが迷い込んだのは、永遠の少年ピーター・パンが無邪気なる暴虐の限りを尽くすネヴァーランド(決して存在しない国)だった。トンチキな会話劇と凄惨な殺人劇がクセになる、稀代のエンターテイナー・ヤスミンの特殊設定グロミステリ〈メルヘン殺し〉シリーズ第四弾にして最終巻。2023/12/25
nil
18
『ピーター・パン』と小林泰三の親和性の高さ!オチとラストは本作が一番らしく感じて好きかもしれない。今作でもどういう仕掛けが施されているかは分かっているのに見事にハマる。小林泰三の作品はいつも深読みを忘れて純粋に楽しんでしまう。今作も変わらずビルが愛くるしい。続編も色々練られていたとのことで本当に残念だ。未だに小林泰三がいなくなった世界が信じられない。満足した気持ちと、氏と氏の作品を愛する気持ちと、改めて氏を喪った悲しみとシリーズ断絶の無念な思いが混ざり合って、なんだかいつも以上にまともな感想が書けない。2023/02/22