内容説明
アリバイが消えたとき、笑うのは誰だ? 没後20年。「木枯し紋次郎」だけじゃない、ミステリ作家の面目躍如。本格推理から、サスペンス、そして著者の真骨頂たる宿命小説まで、バラエティに富んだ作品8篇をセレクトする。
*収録作品
殺してやりたい
十五年は長すぎる
お嫁にゆけない
第三の被害者
不安な証言
鏡のない部屋
アリバイ奪取
「笹沢左保君の活動ぶりはまことに驚異である。ここに集録されている作品などは笹沢君の実力を示すものであろう。「鏡のない部屋」は醜女の悲劇を扱った傑作だ(中略)。それにしても笹沢君の力量は、はかり知れないものがある。現在、推理作家中、最も多作をしているようだが、それでいて、駄作が見当らないから敬服のほかはない。」(『鏡のない部屋』〈宝石社、1963年〉に寄せた江戸川乱歩のコメント)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
25
やっぱりさすがというべきか。昭和の流行作家というと古さや粗さがあるのではというこちらの偏見を簡単にひっくり返してくれた、すぐれた短編集でした。もちろん時代を感じる部分は多々あるものの(昭和の女どれだけ結婚したかったの)それが傷になっていないというか、作品の中でその価値観がちゃんと成立しているから、どんなに時代が流れても物語は古くならない感があります。面白かった。2023/03/07
ネコベス
25
著者の1960年前後に発表された8篇を収録した短編集。貞操観念の強さや激しい労働争議等に時代の雰囲気が感じられる。恋人に裏切られた女が復讐に憑りつかれ町を彷徨う「殺してやりたい」、脱走した凶悪犯の立てこもり事件の顛末をスリリングに描く「第三の被害者」、醜女の社長令嬢の結婚とその後の悲劇を描いた「鏡のない部屋」が良かった。2022/12/11
だるま
15
笹沢氏の長編ミステリは、徳間の有栖川セレクションで順次出ているが、今度は日下三蔵さんセレクトの短編集が出た。初期の作品ばかり8編収録。解説で徳間の長編の事にも触れていて、他社なのに宣伝みたいに詳しく書かれていた。いいのか?(^-^) この短編集の中身も、日下さんが選んだだけあってつまらない作品は皆無。本格ミステリは表題作を含め3編程で、他はサスペンス風やどんでん返しや皮肉な結末を楽しむ広義のミステリーだった。短編ならではの強引な展開が目に付いたけど、初期の頃から趣向を凝らした作品を書いている事に感心した。2022/11/05
ふう
10
笹沢左保のミステリ短編集。読んだことあったり、時代を感じてあまりピンとこないものもあったけど、「殺してやりたい」「十五年は長すぎる」などどの作品もお話として面白く読めた。一番ミステリっぽい「木枯し紋次郎」のエピソードをいつか読んでみたいけどいつになるだろう…。にしてもカバー写真の笹沢先生しぶいなあ。前に見たことある時は料理家の結城貢みたいなイメージだったけどこの写真は東京ホテイソンのショーゴみたいだ(笑)2023/01/27
jima
8
短編8作品。1961年から64年の作品。面白かった。2023/05/19