内容説明
映画原作『犯罪小説集』とあわせてシリーズ累計20万部突破! 著者のライフワーク第2弾
「もう、逮捕でもなんでもしてくれんね」
高校卒業後、地元の北九州を出て職を転々としてきた福地秀明。特に悪いことをした覚えもないのに不幸続きで、年老いた母親と出口のない日々を送る秀明は、一方通行違反で警察に捕まった時、ついに何かがあふれてしまった。そのまま逃走を始めた秀明は……(「逃げろ九州男児」)。
職を失った男、教師と元教え子、転落した芸能人、失踪した郵便配達員――日常からの逸脱を描く4つの物語。
「小説の最前線に位置する短編集」(解説より) 酒井信(文芸批評家)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
72
例えば鬼ごっこをしていたときずっと逃げたいという気持ちともう、いいかと捕まりたい気持ちが相反した記憶がある。本書は4人の逃亡者のお話である。みんな着々と準備していたのではない、運命という名のボタンのかけ違いから、何かから逃げている4人。犯した罪は微罪かもしれないが逃げることにより罪が加重される境遇。いつからゲームが始まったか曖昧な境界線に溺れて反旗を翻すのか。運命の別れ道はいづこへ。生活保護問題、未成年との恋、薬物など今の問題もスパイスを効かせる。生きても逃げても真っ暗闇じゃないか。わたし達は、いづこへ。2024/03/13
小説を最初に書いた人にありがとう
69
逃亡をテーマにした短編連作、どの話も不器用だけど自分なりに真面目に生きていた人が逃亡に至るストーリー。みんな、ふとしたきっかけで気持ちの一線を越えた時に逃亡してしまう展開に自分にもあり得る話だと思った。「逃げろ九州男児」の逃げる時の「もう、いいや」と漏れた感情がよく分かる。どの作品も憎めない主人公たちの逃亡劇につい感情移入。さすが吉田修一作品。2022/10/11
kei302
63
四人四様の“逃げる”は、実際の事件からインスピレーションを得たのでしょう(たぶん)。アイドル行方不明逃亡話が面白かった。ゴシップ的に扱わず、純朴な男の勘違いの可笑しさと、逃げる芸能人の心境や悟りの絡め方には人生の深さを感じた。アイドルが自分の冷たさに気づくラストが最高。2022/12/20
*すずらん*
55
逃亡と聞くとそこに事件性を感じてしまうが、逃げるに言葉を変えてしまうと、また話は別である。生きていく中、人は何度となく思う。逃げてしまいたいと。そこで本当に逃げてしまう人もいれば、グッと堪えて立ち向かう人もいる。「逃げるが勝ち」という言葉がある通り、どちらが正しいとは言えない。只私達には窮地に追い込まれた時に、逃げるという選択肢を持っていることは確かだ。しかしそれすらも忘れて、日々を過ごしている人の方が多いと思う。本を閉じた時、私もずっと逃げたかったのかもしれないと、隠し続けてきた本当の自分を見た気がした2024/02/13
BLANCA
42
「シリアスで、少し滑稽で、まっすぐで、小さな希望もある、そんな様々な逃亡劇を書きました。今、あなたは何から逃げたいですか?」作家さんのメッセージ。4つの話の主人公はとにかく逃げる! それぞれの希望に向かって…。切なく、力強く…。私はこんな必死に、何かから逃げる状況に追い込まれた事はないからこそ、どの物語も登場人物が「生きている」事が伝わって作家さん、さすがだなぁと思いました。本当、下手くそな感想ですみません😓2022/12/06
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