この夜を越えて

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この夜を越えて

  • ISBN:9784865280944

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内容説明

「水晶の夜」の2年前、1936年3月のフランクフルト。ヒトラー総統の来訪に沸き立つ街で、19歳のザナは兄嫁が開くパーティーの準備に奔走していた。
食い扶持を稼ぐためにナチスにおもねらざるをえない小説家の兄、愛と夢に生きる兄嫁、美しい友人とそのユダヤ系の恋人、仕事を干された反ナチのジャーナリストに、親衛隊や突撃隊の青年たち。ザナの周りの人々は、それぞれの生活と思想を守るのに精一杯だ。
パーティーの夜、恋人フランツがケルンからザナを訪ねてくる。ある凶報とともに……。

20世紀前半のドイツを代表する女性作家が、ナチスが台頭する瞬間をリアルタイムで描いた群像劇。

目次

この夜を越えて
解説 『この夜を越えて』と著者イルムガルト・コインについて
訳者あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

天の川

53
若き女性作家コインがこの作品の新聞連載を始めたのは、ホロコーストのきっかけとなった水晶の夜が起きる2年前の1936年。本の舞台も1936年のようだ。ごくごく普通の19歳の少女ザナの目を通して描いたリアルタイムのドイツ。密告が横行し、ユダヤ人への迫害がひたひたと迫っている中、矛盾を抱えつつもナチスに熱狂しようと歩を進めていくドイツの人々がそこにいた。ラスト、彼女は恋人と国境を越える。「神様、明日は太陽が出ますように。」と願いながら。この言葉は、この本を書いた時点でのコインの祈りだったのではないだろうか。⇒2022/11/30

たまきら

40
1936年に出版された、1936年のドイツを舞台にした小説です。第二次世界大戦が勃発することになるドイツの一般人たちのナチへの戸惑い、多数派へのおもねり…。びっくりするぐらい平凡な「一市民」が登場人物であり、だからこそこの本が今日本で出版される意味を考えずにはいられません。2023/04/01

くさてる

24
ナチスが台頭する1936年のドイツで暮らす主人公、ザナの一夜の出来事。目に映る現実が、生々しく、苦しい。どこにも逃げ場がないなか、それでも暮らしは続いていく。ザナのなかに確固たる政治的信条はなく、彼女はただの若い女性。ただおびえて、怒って、困っている。そして、恋の炎だけを信じるしかない愚かさに駆り立てられて走り出す。そのリアリティに圧倒されました。実際にナチの弾圧を受け、亡命した作家が当時書いた作品、という以上の重みをもつ作品です。2023/02/08

paluko

12
新聞で紹介されていてこの作品、作家の存在を初めて知った。ナチ政権下で、実際にナチに迎合して生活せざるをえなかった人たちの生活を描いたものはこれまで読んだことがなく、衝撃的。酒席では「わが総統に乾杯」、街の店々には「ユダヤ人お断り」の張り紙、「人種混淆」の忌まわしい結果を見せるための衛生博覧会! 「ゲシュタポの部屋はまさしく巡礼地といったところだ。母親たちは嫁を訴え、娘たちは舅を、兄弟は姉妹を、姉妹は兄弟を、友だちはその友だちを」(86頁)という、『1984年』を地で行く世界。2022/11/29

まこ

7
ナチの影が色濃くなる中で、ナチを歓迎する周囲とナチの弾圧の対象となる兄や友人の間。心の中でナチへの皮肉をこめるのはザナだけじゃないかもしれない。飲んだりパーティのシーンがよく出てくるけど、それに紛れて言いたいこと言ってるんじゃ2023/05/16

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