内容説明
朝の満員電車、ほんの一瞬、僕の手の外側を包み込むように握ってから、すっと離れた冷たい手。「死んだ嫁の手や」。生きているとき、いつも手助けしてくれた手。二度目はエレベーターの中で声が聞こえた。「間違いない。嫁が来たんや」。結婚して間もなく癌でこの世を去った彼女が幽霊になっても伝えたかったこととは(表題作)。街の片隅に暮らす、夫婦、親子、カップルなど、不器用でただ一途に生きていくことしかできない七人の物語。泣けて笑えて、読むと優しい気持ちになれる――。感動作の名手・カトゲンが贈る“大人のおとぎ話”。
目次
嫁の遺言
いちばんめ
あの人への年賀状
不覚悟な父より
あんた
窓の中の日曜日
おかえり、ボギー
あとがき――『嫁の遺言』というおとぎ話
あとがき――『嫁の遺言』リターンズ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっ!chan
24
あとがきで作者は「大人のおとぎ話を書きたかった」と書いている。物語は親子や家族、恋人達の離婚や不倫など日常の行き違いから生まれた、ある意味取り返しのつかなくなったような出来事や事件からこじれた関係を、なんとか元に戻せないかともがく姿を描いた短編集。どの話も決して幸せなエンディングを迎えるわけではないけど、でもホッとする気持ちがわくような読後感は味わえます。そして解説で作者は「本当に欲しいもののために、つらい選択をして手放す事を知る事ができた人間は誰よりも幸せだ。」と言っています。わかります。2023/04/02
ナオ
6
再読。帯にある大人のおとぎ話だとすると、少しだけ切なすぎると思う。メンタル弱ってる時に読むと染みすぎるとゆーか。7つの短編からなる作品だけど、それぞれ主人公は何か屈託を抱えていて、ラストも解決はしないけど、それありきで、そこから進む感じはある。誰かにとっては寄り添ってくれる、暖かい作品集ではあると思う。2023/03/11
TOMTOM
4
短編集。物語によってはどうしようもないけれども憎み切れない人やつながりが紡がれ、どの話も沁みます。2022/08/07
マシンガン
2
家族や身近な人とのこれまでの関わりと転機のときの変化を、主人公の心情を中心に描く短編集。対象となる人はしょーもないヤツが多いが、しょーもないと云いながら離れられない主人公がいじらしい。関西弁が醸し出すいいニュアンスが、作品全体を温かく包んでいる。2023/11/05
oanchan
2
なぜこの本を読もうと思ったのか思い出せないけど、思い通りにいかない人生とか、理屈なくしょうもない男と縁が切れない人の話が沁みた。2023/07/01