内容説明
鎖国下の江戸時代、日本独自の数学文化が華ひらく。なぜ男たちは和算に人生を賭けたのか。いかにして世界に先駆ける研究成果を生み出したのか。吉田光由、渋川春海、関孝和、建部賢弘、有馬頼ゆき、会田安明、山口和、小野友五郎……個性豊かな8人の天才たちの生涯から、江戸流イノベーションの謎に迫る歴史ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
79
数年前に話題になった映画『天地明察』に絡めての出版か。以前から江戸時代の数学者らの活躍を知りたかった。和算の世界で、知っているのはほんの数人か。生粋の数学者ではやはり関孝和が傑出している。何かの本で読んだことがあるが、「江戸時代後期には日本全国津々浦々に数学の愛好者がたくさん出現し、難しい問題が解けたときには絵馬(算額)を作って神社仏閣に奉納した」という風習が興味深い。公共の全国的な発表の機会がなかったろうし、そんな中、自分の成果を天下に示したい気持ち、いじらしいというか切ない。2021/05/05
№9
30
江戸初期に出版された数学本『塵劫記』が、江戸庶民の間でベストセラーとなった。それはやがて知的好奇心を満たす遊び心でもって、「算額」や「遺題継承」を通して江戸の社会の全国津々浦々に、数学を愛好する人々を生んでいったということに驚く。そうした数学ファンのトップにいた「個性豊かな」和算家たちの業績と生き様を、小難しい理論は抜きにして、数学と聞いただけで腰の引ける読者にもわかりやすく紹介してくれる。巻末には「付録問題」が付いていて、江戸庶民たちが実際に悪戦苦闘(?)したであろう様子を伺えるようであり、面白かった。2013/08/15
to boy
23
江戸時代の和算家8人の生涯と経歴をうまくまとめてあります。伝記というには簡略すぎていますがとても読みやすかったです。有名な関孝和の生涯に不明な点が多いというのも不思議。また、各派に分かれて秘密主義のなっていた和算のなかですべてを公開し関派に挑んだ会田安明さんに魅力を感じました。もっと詳しく知りたい。2015/09/29
キコ
22
天地明察では渋川春海が用いた方程式などは詳しく触れられていなかったため、ああこうやって天体の位置を計算したんだー、と。そして江戸時代の数学書「塵劫記」、実用的でとっても面白そう。更に海賊版と区別するため、難問を答え無しで載せたのは名案!結局それを読んだ数学好きな人々が頑張って解こうとして、更に数学がブームになったと。この本の最後にも高校生レベルの問題が載ってますが、高1で数学をリタイアして文系に進んだ自分にはサッパリです。でも数学って理論を勉強するのは面白いと思う。計算をするのは嫌だけど!2017/02/13
かどま・うみひさ
18
名を残した江戸時代の方は多いですが、題名のとおり数学者に焦点をあてた一冊です。鎖国中の江戸幕府で数学がどのように進化したかも教えてくれます。全8章で、8名の方を取り上げていて、どの方も成し遂げたものの大きさに圧倒されました。本自体は整理されていてとても読みやすく、なおかつ数式等の解説書ではないので文系の自分でもすんなり情報を取り入れることができました。8名も紹介してくれているので、必ず「この人のことをもっと知りたい!」と思う人が出ると思います。自分は関孝和を目的に読んだのですが山口和も気になりました。2014/02/07