内容説明
東京都北区・音無橋のそばの定食屋。生死不問でご来店お待ちします――会社になじめず仕事もできず、鬱屈した毎日を送る凛々が野良猫と雨宿りをした「たもと屋」。そこは心残りのある死者が立ち寄る定食屋だった。身も心も疲れ果て死者と勘違いされた凛々は、勧められるまま食事を注文する。懐かしい味に心もお腹も満たされた死者たちはやがて旅立つ。凛々もまた、仏頂面でも面倒見のいい店主の青年のごはんを常連客と食べるうちに、元気を取り戻していく。逝く時も、生きる時も、寂しい人はお越しください……。定食屋を舞台におりなす、ちょっと不思議なごはん物語。
目次
プロローグ ある日のたもと屋
【1】不器用の神様
【2】ミキコを探して/彼女のオモイデ
【3】天国まであと一寸
エピローグ ある日の音無川親水公園
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ツン
92
亡くなっているかと思ったら、生きていて、生きているかと思ったら、亡くなっていて。生者と死者が訪れる不思議な定食屋さんのお話。彼女の願いが叶って、二人が結ばれる日が見たいけど。続編はあるのかな。2023/08/28
佐島楓
76
著者らしい辛辣さとユーモア、飯テロを織り交ぜながら、ほろっと泣かせる内容に仕上がっている。その後のふたりの関係が気になるので、シリーズ化を希望します。2022/08/24
yukision
65
飲食店に幽霊が出る(といってもハートウォーミング系)話は何となく好きでいくつか読んでいるが,こちらの,入店してきた人が幽霊か人間かが接客するまでよくわからないという設定が私には新しかった。軽く読めて楽しめた。2025/04/15
よっち
44
会社になじめず仕事もできず、鬱屈した毎日を送る凛々が野良猫と雨宿りをした東京都北区・音無橋のそばの定食屋「たもと屋」。心残りのある死者が立ち寄る不思議な定食屋を巡る連作短編集。身も心も疲れ果て死者と勘違いされた凛々が食べた鮪カツ丼、思い出の天津飯、父娘の絆のほっけ定食。凛々は壮絶な勘違いをしたり思わぬ事態に陥りながら、仏頂面でも面倒見のいい店主の青年のご飯で元気を取り戻していって、だからこそ最後のエピソードは何とも複雑で切なくなりましたけど、そんな店主と凛々のこれからの物語をまた読んでみたいと思いました。2022/08/19
tenori
41
まだまだ暑い晩夏にさらりと読める軽めの怪談。彼岸と此岸の結界。そのあわいに位置する定食屋は彼岸へ渡ろうとする人を最後にもてなす場でもある。店を営む愛想に欠ける聡一郎、常連で明朗な小説家の菫、雨宿りがきっかけで店を知った凛々の共通点は「あちら側」に旅立とうとする者が見えること。凛々にとって互いの存在が日常になった矢先に入り始めた微妙な亀裂は聡一郎と菫が抱えていた秘密へと繋がっていく。あっけらかんとしたタッチながら名残のせつなさも感じられ、読後感は悪いものではない。2024/08/23