社会運動の戸惑い - フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

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社会運動の戸惑い - フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

  • 著者名:山口智美/斉藤正美/荻上チキ
  • 価格 ¥3,080(本体¥2,800)
  • 勁草書房(2022/09発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
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  • ISBN:9784326653775

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内容説明

男女共同参画事業の名の下に、条例づくりや事業の任い手となったフェミニスト。それを中央からおりてきた政策と捉え、反発した保守運動。「バックラッシュ」として、地域やインターネット上で広がったこの衝突の実際をフィールドワークと双方への丹念な聞き取りから明らかにする。フェミニズムが本当に取り組むべき課題のために。

目次

まえがき

第一章 「ジェンダーフリー」をめぐる対立[山口智美・荻上チキ]
 1 「ジェンダーフリー」と「男女共同参画」の誕生
 2 反フェミニズム運動とジェンダーフリー批判
 3 「バックラッシュ」の退潮とフェミニズム

第二章 地方からのフェミニズム批判――宇部市男女共同参画推進条例と『日本時事評論』[山口智美]
 1 日本時事評論との出会い
 2 基本法から「モデル条例」へ
 3 『日本時事評論』とは?
 4 ひっくり返された宇部市男女共同参画条例案と保守の動き
 5 「モデル条例」への反発と地方議員の役割
 6 日本時事評論の役割
 7 宇部条例は「歯止め」の役割を果たしているのか
 8 宇部条例への注目と「モデル条例」のアイロニー
 9 フェミニズムをどうみているのか
 10 男女共同参画の一〇年間は何だったのか?

第三章 千葉県に男女共同参画条例がない理由――条例制定運動の失敗と保守の分裂[山口智美]
 1 唯一条例がない県・千葉
 2 男女共同参画条例案をめぐる顛末
 3 「良識的な条例づくり」を目指した日本会議系保守運動
 4 保守の分裂
 5 フェミニストの動きと千葉県条例
 6 条例廃案後の千葉県と、運動の衰退
 7 千葉県条例をめぐる運動が提示した課題

第四章 「性的指向」をめぐって――宮崎県都城市の条例づくりと『世界日報』[斉藤正美・山口智美]
 1 フェミニズムへの「バックラッシュ」と世界日報
 2 都城市男女共同参画社会づくり条例
 3 条例への反対の動き
 4 旧条例の制定から新市長による条例再制定まで
 5 世界日報によるインターネット戦略
 6 条例をめぐる係争から見える課題と「市民参加」の内実
 7 都城のこれから

第五章 男女共同参画とは何か――ユー・アイふくいの図書問題をめぐって[斉藤正美]
 1 男女共同参画センターの運用
 2 推進員活動をしていた「バックラッシュ派」
 3 男女共同参画推進員という制度
 4 図書問題
 5 インターネットの活用
 6 現在の福井の男女共同参画政策
 7 「男女共同参画」の意味を問い直す機会の損失

第六章 箱モノ設置主義と男女共同参画政策――国立女性教育会館(ヌエック)[斉藤正美]
 1 ヌエックや男女共同参画センター事業とのかかわり
 2 ヌエック問題とは
 3 ヌエックと男女共同参画センター設立の背景
 4 婦人教育・女性教育
 5 運営体制
 6 ヌエックと全国女性会館協議会
 7 箱モノ設置主義と意識啓発事業の限界

第七章 フェミニズムとメディア、インターネット[山口智美・斉藤正美]
 1 フェミニストのメディア活用の現在
 2 女性学の書籍刊行と女性運動――一九八〇年代
 3 「ジェンダーとメディア研究」と行政――一九九〇年代
 4 フェミニズムによる情報ネットワークの構築――一九九〇年代
 5 「バックラッシュ対抗」をうたいはじめてから――二〇〇〇年代
 6 フェミニスト・メディアの今後にむけて

結びにかえて[荻上チキ]

あとがき
調査記録/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

48
【今の私たちに必要なのは、実証に基づいた丹念な改善提言。潜在的なニーズの発掘と発信。現場のニーズに根ざした活動。状況に合わせた新陳代謝の加速。社会問題の具体的解決】「男女共同参画」や「ジェンダーフリー」という言葉の使用に端を発する、フェミニズムと保守系反フェミニズムとの係争について、当事者たちへの聞き取り調査や関係観察を行い、エスノグラフィーとしてまとまたもの。本書の特徴は、フェミニズム側である3人の筆者が、反フェミニズム側への聞き取りを行っていること。2012年発行の本ですが、示唆に富む本でした。⇒2023/02/04

二人娘の父

11
旧統一教会関連でにわかに脚光を浴び、存在を知ることになった本書。10年以上前の出版ということだが、その点を加味しても、今読むべき労作。フェミニストによる自省的な視点からのルポルタージュでもある。私が新たに得たものとして二点記録する。第一は「草の根保守」と言われるものの実態。地方での「保守」の運動は、正直目を見張るものもあるし、信念に基づくものとして賛否は別として敬意をもつべきものであった。第二は、フェミニズム運動側の「レッテル貼り」への戒めである。荻上氏のまとめに詳しいのでぜひ読まれたいと思う。2022/10/05

チェアー

8
そもそもの「ジェンダーフリー」の概念から誤読だったという部分は衝撃的だった。原著をだれも読まないジェンダー学は学問として成り立っていたのか、と思ってしまう。 受け取る人によって意味の違う「ジェンダー」が跋扈し、ジェンダーと聞くとだれも反対できない状況が現出した。 「自分達は正しい」と考える足元の砂は崩れている。この本から10年が経っても、その構図は続いている。 この本の続編(ジェンダーはこの10年でどう動いたのか)を読みたい。あるのかな。 2022/09/28

kenitirokikuti

6
図書館にて。再読(2017年に読んでいる)。最近はネット使いの韓国フェミが騒々しいが、スマフォの普及と機械翻訳の性能向上が大きいな。いま読むと、90年代後半~00年代前半のインターネットにはアングラ感があって、女性市民運動家・学者らはネットを怖がっていた、という記述がとても興味深かった。杞憂といえば杞憂にすぎないのだが、しかし、千葉県住まいの自分も、初めて麗澤大学/モラロジー研の図書館・資料館に足を運んだときにはちょっとビビってたことを思い出す。自分は創価やエホバともめた経験あるので処女ではないだけども。2020/08/12

takizawa

4
フェミニストがバックラッシャーにフィールドワークする,という試みが面白いと思った。フェミニストというと,理論武装でタコツボ化していく知識人層か,都合の悪いことは聞かなかったことにする運動家層みたいなイメージしかなかったので,こういう自己批判的なものが内部から出てくるのは良い傾向。宇部市・千葉県・都城市の男女共同参画条例策定過程を丹念に振り返る論稿は(行政学的な観点から)貴重な分析かもね。審議会方式の問題点やそもそもなぜ条例を作る必要があるのかとか,色々考えさせられる。2012/12/22

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