内容説明
多感な少女の心の揺らぎを繊細な筆致で描いた「神馬」をはじめ、「兵隊宿」(川端賞)「蘭」など短篇小説十三篇。古典文学へ、広島の原爆体験へと思索を誘う「愛するという言葉」「時の縄」など随想八篇。自選短篇集に国語教科書で親しまれた作品を併せた決定版作品集。
〈解説〉堀江敏幸
目次
Ⅰ
兵隊宿/虚無僧/蘭/春/迎え火/降ってきた鳥/湖/花の下/鶴/神馬/霊烏/鮎の川/儀式
Ⅱ
旅/虹/春 秋/広島が言わせる言葉/愛するという言葉/時 計/神 秘/時の縄
あとがき
解説 堀江敏幸
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
107
著者は広島出身の小説家・評論家。こちらは著者による自選短篇集に随筆を加えて編纂されたもの。主に戦時あるいは戦争の名残りがある頃を舞台としており、どこか懐かしい風景が描かれる中、当時の日常の思い出から気付かされる人生の不確かな儚さや覚束ないやるせなさに心が揺さぶられる感覚をもった。人が生み出したものは人に回帰する。自尊と謙虚さを携えて生きることの大切さを言われた気がした。K小父さんもきっとそうなのだ。被爆した広島が言わせる言葉、意味づけられていない広島への著者の思い、それらを胸に留めながら本を閉じた。2022/09/16
天の川
59
竹西さんの文章は無駄がなく端正で、人生の深淵を感じさせてくれる。小説13篇、随想8篇は実に多彩だ。戦前・戦中の少年少女が主人公の作品は懐かしい中に閉塞感や時代が抱える悲哀が見え隠れする。『迎え火』の主観と周囲のそれぞれの客観で浮かび上がる老女の人生に様々な感情が湧き上がる。女学生の時に被爆し、住み慣れた広島の街や友を喪った作者だからこその『儀式』は随想の『広島が言わせる言葉』『時の縄』に繋がり、『源氏物語』を例にとった『愛するという言葉』に言葉の持つ深さを知る。堀江敏幸さんの解説も含め、珠玉の一冊だった。2023/04/14
広瀬研究会
7
端正で感じの良い文章。特に一人称で語りかけるような文体の『降ってきた鳥』『花の下』『霊烏』は、こういうのであればAudibleで聞いてみたいなって思う。『兵隊宿』や『神馬』のような子供と馬の取りあわせは、国木田独歩の『馬上の友』もそうだったけど、無条件で懐かしい気分にさせられてしまう。小説13篇、随想8篇が収められていて、小説のパートを読み進めて行くうちに、「昭和四年、広島市に生まれる」という著者紹介が胸に重く迫ってき、また一から読み直さねばという思いを抱かせる。2023/02/12
たけし
6
戦争を背景に書く短編集。国語の教科書にも多数採用されている。多くは静かで直接戦争を語らないが、それを滲ませる心の奥底の感情の動きを描くものが多い。風景の描写が細やかだ。全てがうねりの少ない作品集かと思いきや、違った。「儀式」という作品は、非常におどろおどろしい。その他のものと比べて異質である。でも、それでも全ては語り切れないといったふう。小説以外も収められていて、「広島が言わせる言葉」がある。原爆というあの出来事に言わされる、また広島に言われる言葉に敏感になり、語れなくなる、と言う。それが事実なのだろう。2025/11/01
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