内容説明
精神科医の六麦克彦は、医局から派遣された要鹿乃原少年院に勤務して5年になる。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちの姿だった――。累計100万部を超えたベストセラー新書の世界を著者自ら小説化、物語でしか伝えられない不都合な真実を描きだす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
77
発達障がい者支援法が制定され、陽の目を見るようになったかと思いきや、日暮れて途遠しの感強い。4話のストーリーで自閉スペクトラムの問題が顕在化する展開はこの手の話に疎い方には解りやすい。そもそも、この症状をモチーフにした小説が結構あるが、私は1冊読んで辟易した記憶がある。十人十色いや、もっと多様かもしれない。遺伝しないと言われていても当事者の親が。。という事もあり虐待事例にも挙がっている。五十年余前は白痴、精薄など差別用語が知的障害、軽度精神遅滞など名称を変えても本質はそのまま。そして支援ツールも未知が多い2023/01/03
こも 零細企業営業
54
マンガになった具体的な例をドラマ仕立てにした感じと言ったら良いのだろうか?と書きながら、漫画の方は読んでなかったりする。はじめにを読むに、漫画の方も読んでみないとわからないかも?もう一度、元になった本を読みたくなった。そして、自身にも振り返って似たような処がないかと探ってみたくなる。他人のフリ見て我がフリ直せ。と言っても自分の事なんて1番わからない。先に他人の方のアラを見付けて、この本の子供たちに当て嵌めてしまってもいる。それで、認識が出来ない。流す能力が無い奴なんだと思って距離を取るつもりになってる2022/09/20
かおりん
40
精神科医の六麦が少年院に勤務する中で知り合った少年少女たちの話。非行少年たちには障がいをかかえていることが少なくない。育ってきた環境が要因のこともあるが、自閉スペクトラム症などの軽度な目に見えない障がいをもつ人は生きにくいし、支援されにくい。乳幼児の頃からその芽はなんとなく分かるし、情報過多で「発達障がい」ではないかと心配する人も多い。でも犯罪や非行、問題行動はよくない。身近にそういう事例がないと理解は難しいけど、こういう本で理解する人が増えるといいなと思う。2023/01/15
kaede
30
「ケーキの切れない非行少年たち 」を読んだ方に是非とも読んでほしいと思う。先日の報道では学校の1クラスに3人ぐらい発達障害の疑いがあると教師達が返答。本書は小説の形を取っているので、より非行少年がリアルに感じられる。人口の14%ぐらいが境界知能レベル。この現実を受け止め、政府・民間・個人として受け入れる体制を整えていかなくては、と考えさせられる。今の学生は発達障害という認知が広まっているので見つかりやすいが、30代以上は見逃されている可能性も高い。あなたの職場にもきっといる、境界知能レベルの方が。2022/12/17
えも
29
確かにケーキの切れない境界領域の少年たちは、障害名が付かないゆえに誰にも知られず疎外されていく。思い起こせば小学校時代にも▼この本は小説仕立てにすることで前作で伝えられなかったメッセージを伝えようとしている。でも前作を読んでいないので「どう接したらいいのかもっと具体的に教えて!」と思っちゃうよね▼かくして、関連書籍に手を出し始めるんだよなあ2022/12/16