内容説明
毎年夏休みを過ごす祖母の家で、14歳のテレーザは共同生活を営む少年3人と出会い、その中の一人と恋に落ちた。4人の友情は永遠と思えた。だが数年後、その少年が他の少女を妊娠させたと知り――。『コロナの時代の僕ら』の著者が描く、男女4人の愛憎の物語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
58
ベルンは、あまりにも純粋で、彼の世界に対する好奇心と知識欲は止まる所を知らず、ひたむきに理想を追い求める。だが、彼の理想は高すぎて現実離れしており、彼を絶望させ、彼はどんどん厄介な方へと走っていく。ベルンやテレーザの思春期の少年少女らしいエゴ、大人たちの打算も混じったエゴ。登場する人々は、本当に誰もがみなエゴイストだ。そして、テレーザの欲望と執着。南イタリアの風景が詳細に描かれているだけでなく、人間の心理までもがむき出しにされ生々しく描かれている。2023/05/30
cupcakes_kumi
33
久しぶりに読んだ文芸作品だった。人間の営みの原点回帰を実践する少年の人生に、息苦しさや、純真ゆえの痛々しさが否応なく読み手を貫いた。純度の高過ぎる純粋主義の終末が、余りにもロマンチックで美しく涙せずにはいられない。自分のいる世界と折り合いのつかない信念と共に生きることは、何と生き辛いことだろうと思う。2022/02/01
星落秋風五丈原
21
好き合って結婚した二人がそのまま幸せになりましたとさという話だったらよかったのにうーん、どうして不幸に進んじゃうの。2024/02/13
spatz
19
イタリアの奇才。素粒子物理学の専門家。小説を読みたいと思っていたところ、新刊の邦訳が出た。訳者の飯田氏がイタリアの風景を時折SNSにあげていらして、翻訳が出ることを耳にしていたので楽しみにしていた。思っていたよりもずっと分厚かったのに驚いた。ゆえに時間がかかった。が、単純に長かったから、ではない。翻訳を感じさせなく心地よく滑らかに流れる物語と、次々に色々なことが起こるのだが、不思議なことに全体にとても静かな印象が残る。起こることだけ追っていたらとんでもなくたくさんのことが起きているのにも関わらず!。2022/02/05
アリーマ
15
父の実家に夏の休暇中、出会った少年ベルンに一目で恋するテレーズ。十代の恋は痛ましくも生臭く、イタリアの田舎の若者の恋愛模様らしいのだが、何故か目が離せない。仲間と共に古い農場で自然農法の自給自足を目指す共同生活も、何かと杜撰で頓挫し、危うさの中で事件に繋がっていくのだが…。引き摺り込まれるように読んだのだが、ラストは着地点が妙なところに飛んでしまった気がして、ちょっと残念ではあったが、面白く読んだ。★★★★ 2022/01/12