内容説明
いったんは「神」と信者をコケにした棄教者のリーダーが戻ってきた。脇腹に「聖痕」を刻んで……。 いったい教会は再建されうるのか? そして神なしの祈りはありえるのか? 「世紀末の闇の深さ、希求する若い魂の激しさ。それをリアルに、明快に書くことをねがった。ひとり少年時に聞いた『神』の声を追いもとめる若者も、死の前に生きなおすことを企てる初老の男も、自分だと思う」(著者)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
21
『燃えあがる緑の木』の続編的意味合いを持つ『宙返り』は、神なき時代に信仰は可能かという主題を引き継ぎ、さらに深化させた小説だ。その動機は『燃えあがる〜』が予兆したかのようなオウム真理教事件が実際に起こったことによる。そのことを考える時、『燃えあがる〜』と本作の関係性は、「セヴンティーン」と「政治少年死す」との、あるいは『洪水はわが魂に及び』と『河馬に噛まれる』との関係性を思い出さずにはおれない。予兆が現実となった事実は、大江健三郎が現在を見つめながらも未来を描いていたことを意味する。(つづく)2025/10/01
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