内容説明
かなわない――。天才肌の彼女に惹かれた美大生の葛藤。
書いた原稿がそのまま自分の夢で再現される不思議な現象にのめりこんでいく小説家の後悔。
幼なじみの秘密を知り、彼との接し方がわからなくなってしまった男子中学生の苦悩。
自分の心に正直でいたいだけなのに。
誰もが胸に抱える生きづらさを鮮烈に切り取った、著者初の短編集。
単行本未収録作品であるタイムリープSF「おれさまのいうとおり」を加えた全7編。
※本書は二〇一五年六月に小社より刊行された単行本に、「小説野性時代」(二〇一六年八月号)に掲載された「おれさまのいうとおり」を加え、文庫化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
112
なんとなくテレビをつけたら「徹子の部屋」。その日のゲストは知らない青年。ジャニーズのNewsのメンバーで作家だと徹子さんの紹介に、急に興味を持ち、どんな本を書くのかなと読みたくなった。若い時の浅はかさ、とても大事なものだから大切にしなければいけないと頭のどこかで分かっているのに通り過ぎてしまったことたち。登場人物たちは若いから、まだ取り返せそうな時なのに、彼らはもうそれをあきらめたものとしている。そんな若さが、とてもいいなと思った。2020/06/13
クプクプ
77
短編集。この作品を読むのはハードカバーで読んで以来、二度目。最初に読んだときは「インターセプト」が特に面白いと思いましたが、今回は、食と人間の欲望がテーマの「イガヌの雨」がまず面白いと感じました。一番、面白いと感じたのは「にべもなく、よるべもなく」です。この短編には加藤シゲアキが少年の頃書いた「妄想ライン」という小説が冒頭に実際に書かれています。「にべもなく、よるべもなく」の物語は中学生の少年を主人公に、まるでドラマを見ているように読者を誘い込みます。加藤シゲアキが俳優をやっているから書けた文章でしょう。2021/03/25
TAKA
70
率直に言って面白かった。現代の男達の苦悩の描き方が上手いです。それは学生であったり、サラリーマンであったり、小説家であったりと、男しかわからない孤独と苦悩が伝わってくる。『Undress』『インターセプト』の情けない男の象徴とも言えるし『にべもなく、よるべもなく』男の子特有の独占欲にもがく姿。加藤シゲアキ侮れない作家です。2021/10/24
Junichi Yamaguchi
52
『喜びは有限。悲しみは無限。』… 生と性。 ある意味で小説家、加藤シゲアキの始まりを感じる作品。 前作までの3作品は、とても好きな作品だがアイドルであり芸能人である著者が見え隠れする部分を感じた。だが、この作品には短編集ということもあるのかもしれないが、全く著者を感じることがなかった。 小説家、加藤シゲアキのこれからに期待が高まる。。2018/07/09
ミワ
31
「Undress」「インターセプト」「にべもなく、よるべもなく」が特に好き。好きな作家さんだと改めて思った。「Undress」はボールペンがそうくるのか、と思った。「インターセプト」は最後に怖っと思った。「にべもなく」は、喜びは有限。悲しみは無限。ただ出来事として受け入れる。の言葉が好き。これからも読んでいきます。2023/12/06