内容説明
A県の小学校で起きた前代未聞の無差別大量殺人。犯行後、犯人の男は居合わせた警官から奪った拳銃で自殺する。現役警官である男の父もまた、直後に自死。県警本部は混乱の坩堝【るつぼ】と化した。謎多きこの事件の解明に乗り出したキャリア女警の由香里は、捜査の末、驚きの真実を見つける。ベテラン警察官達の矜持と保身、組織の理不尽と世間の無情、引きこもりとその家族の実情――数々の問題提起を孕んだ社会派警察ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばんだねいっぺい
30
元・警察組織の一員だった小説家の中でも独特の視座がある気がする。左を見ても、右を見ても警察という感覚の小説。2022/09/20
Sakie
14
老警とはだれか。練られたミステリ。多すぎる情報を疎んでいるとしてやられる。男は女を、親は我が子と組織を、組織は組織と組織内の権力闘争を想って意を決し、それぞれ隠密に行動する。徹底的に被害者やその家族に焦点を当てない、描こうとすらしない、非情がとかく心地悪い。しかし事件が結末を見、終章で作者が書きたかったものが露わになったとき、彼らと彼らの家族に対する私たちの態度は、見ようとしない、無いものであるかのように扱う、同様の非情であると糾弾されたように感じた。閉じてしまったものを開くにはどうすればよいのだろう。2025/01/19
海燕
13
これまでに読んだ警察小説の中で、白眉といってよいのではなかろうか。「老警」とは地味なタイトルだが、読み進むにつれてその含むところが見えてくるのは味わい深い。著者の少しクセのある文体は好みが分かれるようだが、私は苦にならない。どころか、独特の妙味を醸して彩りを添えていると思う。小学校での無差別殺傷事件を軸に進むが、引きこもり、警察の保身といった社会問題、キャリア女警や定年間近の刑事の正義感などで最後まで読ませる。この著者が、これほどに哀しく美しいラストを用意するとは!と感嘆。文庫だがサイン本を入手して。2022/09/25
coldsurgeon
9
物語の結末は、あるべき社会のために重要なことを闇の中に落とし込んでしまうような感じだ。「引きこもり」は、様々な要因で生じており、社会問題化している。しかし、解決の糸口はなかなか見つからず、行政の手も行き届かない。この物語に描かれるような拡大自殺を目論んだ無差別事件が起きうるだろうが、そこに組織の闇が介入すると、事件は複雑化し、多面化することが分かる。弱者の物語を、強者が自由に上書きすることが可能であることは、現実社会をみてみれば、明らかだった。すべて不可解なことには理由があるが、可視化されることはまれだ。2022/09/04
TAMA
8
2022年65冊目。2022/10/31
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