内容説明
『このミステリーがすごい!』大賞シリーズ。洪水・津波・疫病など過去の災害についての伝承を調べ将来の教訓とする「災害伝承」を研究し、マスコミ露出も多い新進気鋭の民俗学者・桜咲竜司准教授。神や妖怪の名を借りた災害伝承について研究する「妖怪防災学」を確立した彼いわく、「妖怪退治とは、人為を超えた不可解な出来事を克服してきた歴史、すなわち防災の伝承でもある」。「新地名に隠された危険な旧地名」や「伝承や神話に登場する怪物の正体」などの講義や書籍が人気で、災害に関するコメンテーターも務める異色の民俗学者である。が、彼には論文盗用の疑いもあった。よく知られた「桃太郎と鬼退治」「河童と人柱」「両面宿儺(りょうめんすくな=頭部の前後両面に顔があり、手足が合わせて八本もある鬼神)の正体」の謎を解く彼の研究は、やがて、思いもよらぬ結論を導き出すこととなり……。そして論文盗用疑惑に隠された悲しい真実とは。知的興奮に満ちた歴史民俗学ミステリー。由来を解き明かされる実在の地名も多数登場します。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
107
理解しやすく速く読める。歴史ミステリであり、フィールドワークもなく、講義と研究室の会話だけでほぼ流れが成立する。結論は驚くべきものだが、それよりも風評被害をなくしながら、古い公害の記憶を伝え続けるべきだという、桜咲准教授の持論の展開に心打たれるものがある。大学に進学したばかりの萌花が、ある確信をもって桜咲に問いただそうとするのだが、そういう方向には行かないような展開になっていく。この盛り上がり方と方向転換のタイミングが、ほんとうにうまくできているので、ストーリーの流れが良く感じるのだろうと思う。2022/12/13
★Masako★
74
★★★✰︎☆ 桜咲准教授は、地名に隠された秘密や神・妖怪伝説を絡めて過去の災害を研究する(災害伝承)、異色の民俗学者。彼に会ってある事を確かめたいと思った梅沢萌花は、桜咲が勤める大学に入学、彼の講義をとったのだが…。両面宿儺、桃太郎、鬼、河童の謎、そしてある武将に繋がっていく民俗学的展開が興味深くて面白かった♪ 三つの「風」の話も災害伝承だけでなく全てに言えることだなあ。研究室内だけで話が進んだので、盛り上がりに欠けたかも。続編はフィールドワークになるかな?2023/10/26
坂城 弥生
49
『両面宿儺』初めて聞きました。民俗学ってこういう風にも役立つんだなぁと。2023/03/19
のんちゃん
45
桜咲竜司は民俗学者で大学准教授、過去の災害の歴史を今に伝え残す災害伝承の研究者。それは地名から分かる災害危険地域や過去の災害結果が妖怪伝説になっている事等を探究する学問だ。その桜咲に大学一年生になった萌花はある疑念を抱いていた。そして教授の研究室に入り浸り、その疑念を探っていくという話。災害伝承の研究内容が話の殆どを占めるが、これが知らない分野だったので興味深かった。大変読み易く、また違う学問のアプローチで著者の作品があれば読んでみたいと思う。姉の不動産鑑定士桜咲椎名の仕事との関連もまた興味深かった。2024/05/17
MATSU
44
初読みの作家さんです。某少年漫画が好きなので特に宿儺!まぁ全く違いますが💦でも、とても面白く読めました。ちょっと強引に持って行き過ぎかなぁと思う所はありましたが、改めて考えさせられる所もありました。桜咲准教授の言う3つの風は本当に気をつけなければいけない事ですね。2023/05/15