内容説明
満洲国・インドシナ・シンガポール・フィリピン・豪州・メキシコ……アジア・北米・中南米諸国が直面していた政治的・軍事的状況をとおして、「日米英仏中ソ」の軍事戦略・政治工作・戦闘の詳細を明らかにし、「日本の戦争」を多面的・複眼的に読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
64
アジア太平洋戦争の周辺地域から戦争を概観したもの。地域別に章立てされ、冒頭にざっくりとした地図が入っているのが理解を助ける。日本が「大東亜共栄圏」といいながらアジア諸国の本質的な独立を支援していたわけではないことが示されるが、軍人の中にも独立を支援しようという人々がいて(特にインドネシアやビルマ)、義勇兵になった者もあったとか。またイギリス連邦国の関わり方が概説されているものは少なく、さらにラテンアメリカについては殆ど知らなかった。フィリピンでメキシコ空軍が日本軍と交戦してたとか。厚さはあるが読みやすい。2022/12/19
雲をみるひと
28
東南アジアやANZなど周辺国から見た太平洋戦争史。総論的な本で、個人の資質で地域に貢献した例外もあるが全体的に日本が当該地域に対するリスペクトを大きく欠いていたことが書かれている。今まで日本ではあまり取り上げられていない視点ではあるが、カバーしている範囲が広すぎるため各地域の深掘りはあまりされていない。2023/04/04
CTC
14
8月の朝日新書新刊。著者は『歴史群像』のレギュラー執筆者、戦史研究家だが…シミュレーションゲーム制作でも高名なようで、確かに論理的で抑制の効いた筆致である。さて本書は先の大戦(アジア・太平洋の)は、日米英中ソ以外の国や地域にとってはどのようなものだったかを見て行くもの。具体的には仏印、英領マレー・新、香港、比、蘭印、泰、緬、印、蒙、豪、NZ、中南米諸国にそれぞれ章を充てている。日頃の読書ではどうしたって大局や戦場の様子に目がいってしまう訳で、大東亜共栄圏の実態が見えてくる発見のある読書になった。2022/09/25
ジュンジュン
13
東京裁判に向けて、オーストラリアが天皇の戦争責任を執拗に追求する事に、昔からなぜだろう?と思っていた。中国とかなら納得だけど。本書で、ようやく長年の疑問が解けた。従来、脇役に甘んじる国々(東南アジア、英連邦構成国、ラテンアメリカ)をメインで扱う意義ある一書。2022/12/11
akiakki
10
周辺諸国から見たアジア太平洋戦争。欧米の植民地であったことは事実だが各国が独立戦争を経て自治を達成するのはむしろ戦後であり、アジア太平洋戦争中はただただ日本軍の戦争に巻き込まれていた。大東亜共栄圏は所詮お題目に過ぎず、日本軍はこんな占領地支配でどうやって戦争に勝つつもりだったのだろう?というエピソードがてんこ盛り。悪手悪手アンド悪手みたいな事例ばかりでかえって学びが少なかった。2023/10/14