内容説明
ユーラシア大陸の広範な地域に存在するテュルク系諸民族。彼らの間で広く語り伝えられた英雄叙事詩の本邦初訳。勇士アルパムスが活躍する各民族のテクスト群を本書に結集する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaeremakure
1
スカーフを樹に掛けて石を積み上げるというモンゴルの霊地のような儀式をやると、白いターバンを巻いたイスラムの聖者が現れて助けてくれる(しかもユスポフ公家の伝説上の祖先であるババ・チュクレス!)といったムスリム文化と土着信仰の習合した世界観が愉しい。主人公がハーンの娘に求婚に行くと、「私を倒せない男とは結婚しない」といって大岩を投げつけてきたり、街中で馬を疾駆させると衝撃波で窓ガラスが割れたりする超人バトルが繰り広げられる一方で、旅立つ際に馬の首に護符をかける等、遊牧民の生活文化のディティールは勉強になる。2015/09/01
四號
0
テュルクの民に伝わる“アルパムス”なる勇士の口伝をまとめたもの。地域が違えば名前も変わり、勇士に訪れる苦難も変わる。変わらないのは勇士の物語を求める人々の想いか。2025/07/07
コマイヌ
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平凡社東洋文庫何冊か読んだけどどれも真面目で面白い。 アルタイ版に顕著だけど馬が強く賢い、馬名を冠して勇士が呼ばれるのが面白い。2024/12/31
Oltmk
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カザフ、バシュコルト、カザンタタール、シベリアなどユーラシア各地に伝わるテュルク系の英雄叙事詩を翻訳した書籍。一部の内容で銃や窓ガラス、大砲などの中世的なディテールが出てくるが、英雄叙事詩の世界を破綻させる事なく構成しておりこうした内容がどの時代に変化したのか、どこの地域で伝わったのかなどを考えるのもまた楽しい。巻末の解説でもこの物語がどれぐらいテュルク系の人々の価値観などを反映しているかを解説しており、その内容も興味深い。現代でテレビアニメとなっていると言うが日本で日本武尊がアニメにしているのと同じか。2018/10/04