ちくま新書<br> 自治体と大学 ――少子化時代の生き残り策

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ちくま新書
自治体と大学 ――少子化時代の生き残り策

  • 著者名:田村秀【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/08発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074959

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内容説明

大学が近くにあることは、自治体にとって地域活性の起爆剤になり得る。高校生が地元で文系・理系だけでなく、看護、芸術といった特色ある教育を受けたり、病院など大学付属機関も誘致できるかもしれない。……とはいえ、地方大学の開学には、国公私立いずれの場合も、財政的な負担が大きい。卒業生が地域に残るかも不透明。これまでに撤退した大学も全国では少なくない。人口減少によってどちらも縮小が予測される自治体と大学。その関係史を紐解き、両者の望ましい協働、今後のゆくえをさぐる。

目次

はじめに/第一章 大学の誕生──戦前の大学誘致、戦後の新制大学/大学とはどのような存在か/国立大学とは/公立大学とは/私立大学とは/自治体とは/帝国大学の誕生/悪しき「慣例」の始まり/京都の次の帝国大学はどこに?/九州帝国大学誘致運動/福岡県、長崎県、熊本県の誘致運動/なぜ京都帝国大学福岡医科大か/九州帝大が先か、東北帝大か/公立大学の誕生/全国初の市立大学は大阪商科大/旧制専門学校から新制公立大学へ/現存する新制公立大学は医歯薬系が半分強/新制国立大学の設置に関する一一原則/第二章 公立大学無用論──財政負担、私学移管、新構想大学の誘致……/公立大学を手放す理由/国立移管された公立大学──静岡県、茨城県、岐阜県……/国立に移管するにも金が必要/公立大学と市の衝突/道楽息子は養子に出すべきか──金沢美術工芸大学の場合/コネ入学問題に揺れた高崎経済大学/私学移管騒動まで勃発/高崎市の財政負担はどのくらいだったのか/百条委員会まで設置された都留文科大学/教育委員会でなく、首長の職務権限/国立学校の新設と政治家の関わり/国立高専一期校と自治体/長岡・豊橋の技術科学大学──新構想大学の誘致1/上越・兵庫・鳴門の教育系大学院──新構想大学の誘致2/鹿屋体育大学、北陸・奈良の先端科技大──新構想大学の誘致3/昭和四〇年代以降の公立大学設立の動き/文部省の方針転換/第三章 平成、令和の新設ラッシュ──国策としての大学〝改革〟/「アメリカの大学」誘致/「アメリカの大学」誘致の三類型/潮目が変わった大学政策──契機は看護系大学の設置/公立大学にも法人化の波が到来/石原都政と東京都立大学の解体と再編/東京の公立大学トップダウン改革の是非/東京都立大学への先祖返り?/大阪の大学統合/府市合わせの統合の先に/特定分野に特化した九〇年代の新設公立大学/二〇〇〇年から二〇一〇年代にかけての新設公立大学/公設民営大学の設置と公立化/二〇二〇年以降の公立大学新設の動き/第四章 変わる関係──高等教育は大都市でしか受けられないのか?/歴史からみえてくる自治体と大学の関係/自治体と国立大学の関係は財政次第/変わる、自治体と国立大学の関係/自治体と公立大学の関係/自治体と私立大学の関係/大学教員出身の首長/国公私立大学ごとに異なる家庭の経済状況/都道府県ごとの大学数格差/市町村の大学誘致メリット/小さな村と大学の関係/大都市部への大学の集中/国による都市部集中への規制/大学と組織の名称/自治体と高等教育政策の関係/文科省の大学COC事業とは/大学誘致に強いコンサル/再び国の規制強化が/自治体と大学の連携協定/アメリカ州立大学の状況/アメリカ以外の大学の状況/日本と海外の大学の比較/第五章 自治体の戦略と私大の地方展開──成功と失敗の分かれ道/私立大学の地方展開/難しくなる大学誘致/大阪府高槻市の大学誘致支援調査から/東海大学の事例──私大の地方戦略見直し1/東京理科大学の事例──私大の地方戦略見直し2/立命館大学の事例──私大の地方戦略見直し3/大学を増やす自治体の戦略/新潟県の地元志向/新潟県に続々誕生する公設民営大学/県と市がコラボして誕生した山形の東北芸術工科大学/山形県が主導した東北公益文科大学/教育県・長野の大学事情/高校生に「優しくない」長野県?/最も大学過疎だった長野市/熾烈だった福島県の大学誘致合戦/東海大学の誘致を断念した郡山市/迷走する郡山市の大学誘致/明星大学誘致を巡る白河市といわき市の明暗/粘りに粘って県立大学開学にこぎつけた会津若松市/大学撤退に翻弄された北海道紋別市/最後は自前の大学をつくった函館市と釧路市/公立大学を設置しなかった栃木、徳島、佐賀、鹿児島/都内や大阪府内の大学誘致/大学誘致の事例からみえてくるもの/第六章 大学冬の時代──撤退・廃止・合併/一八歳人口の推移/大学冬の時代の到来/勝ち組と称された自治体でも大学撤退/大学撤退を巡って、変わり身の早い自治体も/学校法人による「事業継承」/北海道での「事業継承」/大学への多額の補助が問われる時代へ/加計学園グループと自治体/今治市における補助金の妥当性/マスコミ報道の論拠/獣医学部の定員に関して/問題の本質は何だったのか/私立大学援助の効果は五〇倍/揺れる大学のガバナンス/二〇四〇年、消滅可能性大学は……/冬の時代のシナリオ/大学はどこへいく/自治体はどこへいく/おわりに/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

すのさん

7
大学はこれまで、地元の有力者によるロビー活動を通じて地域に誘致されてきた。しかし、少子化や都市集中の進行に伴い、大学の存在意義が改めて問われている。大学と地域社会が互いに連携し、大学が地域に対してどのような価値を提供できるのかを明確にする必要がある。一方で地域側も、大学を誘致する意義や地域全体としてのビジョン構築が欠かせない。大学をただあるものとして受け入れるのではなく、地域の未来像の中に位置づけることが重要だ。時代の変化に応じて地域社会が変容してきたように、大学も今、外へと開かれる転換が求められている。2025/06/01

まる@珈琲読書

6
★★★★★ ■帝国大学誘致の経緯は、各地域の歴史的ポジションを知るよい切り口だった。熊本の事例が特に興味深かった。 ■人口減少対策と大学進学率の上昇を受け、各自治体は18歳人口の確保に動いており、私立大の誘致や公立化などが活発に感じる。一方で、少子化していく中で、これほどの大学数が必要なのか、いずれは淘汰されていくのではと感じた。2023/05/24

もけうに

5
地方自治の視点から、大学(特に公立大学)を捉えた書。淡々とした筆致だが、それがむしろ読みやすい。地方にとって大学は宝だが、中長期的なビジョンを持って教育と向き合わなければ、結局早晩撤退する。戦前における帝国大学の取り合い(?)が興味深かった。長崎の歴史的経緯・位置付けは、やはり函館と似ている。(街の規模は違うが)2024/12/16

お抹茶

4
「自治体と官立(国立)大学の間には,国が本来負担すべきところを地方が肩代わりするという悪しき慣例が続いてきた」と指摘。昨今,公設民営大学など公立大学に注目が集まってきているが,従来の慣例を大して考えもせずに続けてしまうと,自治体にとって無駄な投資になってしまう。この本では詳しく述べられていないが,大学があることで自治体にどのような効果が出てくるかという実証研究があると,単なる大学間の生き残り戦略という次元を超えた自治体と大学の在り方を議論できると思う。2022/09/23

今Chan

4
大学の誘致は、単に地域を活性化するためだとか人口減を食い止めるためだとかだけで考えるのではなく、自治体とビジョンを共有しながら持続可能な大学づくりを考えるべきだという、至極真っ当なことが論じられていた。いろいろな大学の栄枯盛衰を調べたことが執筆動機なのだろうか。だから、どう?というツッコミをいれたくなる読後感。2022/09/12

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