内容説明
尼僧と寺子の熱い絆!江戸版“二十四の瞳”。
江戸は下谷に薫風庵という風変わりな寺子屋があった。三百坪の敷地に平屋の学び舎と住まいの庵がある。二十人の寺子は博奕打ち一家の餓鬼大将から、それを取り締まる岡っ引きの倅までいる。
薫風庵の住人は教鞭をとる妙春という二十四歳の尼と、廻船問屋・日向屋の先代の元妾で、その前は遊女だったという五十一歳の蓮寿尼、それに十二歳の飯炊き娘の小梅の三人しかいない。子供たちの評判はいいが、女所帯では不用心と日向屋の用心棒の堤勝之進が様子を見にやってくる。寺子屋設立の費用と月々の掛かりを出す日向屋は世間体もあって、同じ町内の薫風庵にすげない仕打ちもできないらしい。
そんなある日、隣家の大造が寺子に盆栽を折られたと怒鳴り込んできた。近所では蚯蚓や蛙の死骸を投げ込まれた家もあるのだという。折も折、寺子が学び舎の前で行き倒れを見つける。男前に弱い蓮寿は、城戸宗次郎と名乗る浪人の面倒は薫風庵で見ると宣言する。やがて宗次郎が学び舎で教え始めると、妙春に思いもよらぬ心の変化が……。
隣家への投石は誰の仕業なのか。宗次郎の出現は単なる偶然だったのか。教職の経験もある著者が満を持して放つ江戸版“二十四の瞳”誕生!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
166
いやぁ楽しかった!寺子屋モノは大好き!『尼さん先生は、ちょっと甘ちゃん。妾をしていた女丈夫と心ばえのいい元武家娘。二人の尼僧と子供たちの絆が熱い!』と帯。最初の先生は元遊女の蓮寿尼、出自はさておき評判が良かったが、たった1年で先生役を放り出す。後釜として教鞭に立つのは妙春、頗る頭は良いが、他人の思いに鈍く、悩みながらも頑張る。子供らも個性様々、そりゃぶつかるさ!妙春は先生失格だと評判が立ち事件も絡んでくる。蓮寿尼がいい味を発揮するんだ!大人も子供も互いの交わりで成長してゆく。応援したくなる初々しさ‼️🙇2024/07/24
タイ子
82
江戸の薫風庵という寺子屋が舞台。この庵を仕切る尼さん・蓮寿尼と妙春尼の二人。蓮寿は元遊女で廻船問屋の主の元妾という酸いも甘いも嚙み分けた気風の良い尼さん。妙春は秋田生まれで藩学で教鞭を取っていた父親がある事で急死、家族を失ったため江戸に出てきた算術が得意な尼さん。寺子屋に集まる子供たちもそれぞれに特異性があり、彼らを導く方法を突然現れた浪人者・城戸とともに試行錯誤しながらの日々。突然、少女が攫われる事件が起こったり口やかましい母親たちとの折衝の中、成長していく子供たちを描いた江戸版・二十四の瞳。2022/08/19
DONA
17
かわいい表紙とは裏腹にちょっと重めな内容でした。子どもたちはかわいらしいというより繊細でしっかりしている感じ。先生である尼さんは自信が無さ過ぎて頼りなく感じます。かわいらしい日常が描かれるのかと思えば、事件が発生して予想と違ったのが残念でした。続きがありそうな雰囲気で終わりました。2025/01/22
じお
14
★★★☆☆ 元遊女で妾で今は尼の蓮寿尼が営む寺子屋、そこで子供を教える若い尼の妙春、日々平穏に過ごしていたが妙な事件と浪人者まで転がり込んできてさてはて、いつの時代もモンペはいるものの時代小説。面白かったです、重い過去を持つ主人公に訳アリの浪人、人生のベテランの女性に、個性豊かな子どもたちが織りなすハートフルなストーリーはベタな面白さがありますね。ただ今巻だけだと色々謎なままで終わるところが多く続刊を是非希望というところで。2023/07/29
なおお
12
尼寺で若い尼僧が子供たちに教える日々。戸惑いがあり喜びがある。モンスターペアレントに上手く対応できず、困った時に頼りになるのが、この尼寺を開いた先輩尼僧だが、彼女は元遊女で妾上がり。そのおおらかな人柄で人々を和ませ、時には尼さんにあるまじき言動も。それが面白い!子供達が成長していく様も、なんとも嬉しい。2023/06/25