内容説明
箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。(解説・最相葉月)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HIRO1970
1261
⭐️⭐️⭐️しをんさん9冊目。当初は表紙の絵から安房直子さん的な童話を何故か想像していました。読みはじめて直ぐに上京したての大学生の話である事が知れましたが、まさかの箱根駅伝を目指す展開になり、出場枠ギリギリの10名の男ばかりの登場人物の特徴を見事に書き分けて、見事なまでに息吹きを吹き込んでキャラを立たせている技量に恐れ入りました。この内容を一体どんな構想からここまでまとめ上げたのか?毎度ながらしをんさんの才能に痺れました。スポーツジャーナリストでも無理かなと思える良著です。皆さんにもオススメです。2015/09/16
ヴェネツィア
1057
箱根駅伝が始まってからは疾走するスピードで展開していくが、それ以前は比較的ゆるやかに進行する。かといって、走とハイジ以外の選手たち個々の抱える葛藤が詳らかに語られるわけではない。それはひとえに駅伝に収斂させていくためであったと思われる。10人はそれぞれに個性的だが、リアリティを問えば、たしかに大いに無理があるだろう。しかし、作家にとってはそれでもよかったのだろう。現実の可能性としてのリアリティとは別のところにそれを求めていたのだから。そして、それは成功したようにも、また未だ不十分であったようにも見える。2024/06/03
鉄之助
990
主人公は走(かける)と灰二(はいじ)。”疾走青春小説”にピッタリの名前。自転車で万引きを捕まえるシーンから始まり”つかみもOK”。駆け抜けるように、読んでしまった。 部員10人しかいない駅伝チーム。しかも、ほとんどが陸上経験ゼロながら、目標は箱根駅伝で「頂点を取ろう」なんて劇画チックな設定だ。だが、しをんマジックなのかリアリティがあり、最後まで楽しめた。→ 続く2020/06/01
青乃108号
960
素人同然の8名に実力者2名を加えた寄せ集めの10人の無名大学陸上部員が、箱根駅伝出場を目指し奮闘し、やがてひとつになって行くという物語。時に笑いを交えながら、時に熱く、語られる10人のエピソードが楽しい。そしてなんと言ってもこの物語の白眉は後半200ページあまりに渡って描かれる箱根駅伝の模様。それぞれの区間を懸命に走る寄せ集めの10人の姿がひとりひとり克明に描写され、レース展開と相まって手に汗握る見事な見せ場になっている。そして結果は。読んだ者誰もが納得する、爽やかなものとなっており素晴らしいです。2022/11/26
yoshida
923
毎年お正月にテレビで中継される箱根駅伝。あまり駅伝に興味が無かったのと、本の厚さから敬遠してましたが読んだら感動しました。寛政大学に入学した天才ランナー走は、故障から走りに遠ざかっていたハイジと出会う。住むところも決まっていなかった走はハイジの住む竹青荘に住む。個性豊かな竹青荘の住人10名でハイジは箱根駅伝を走る事を宣言する。10人は駅伝の最小人数であり、誰が欠ける事も出来ない。初めはバラバラだった10人も箱根駅伝を目指し、走る事を通じて人間的にも成長する。中盤以降の箱根駅伝の2日間は一気読みの感動作。2015/05/24