内容説明
ロシア思想を専門とする哲学者、ミシェル・エルチャニノフが、ウラジーミル・プーチンの膨大な演説録、読書歴からその思想を解剖・分析し「頭のなか」を明らかに!
出版されたフランスでは「両世界評論賞」を受賞し、イギリス、ドイツ、スペイン、ギリシャで翻訳されている話題作。
プーチンのウクライナ侵攻の理由について、日本では「体調不良説」も出ているが、本書では彼が持つ危険思想を「ソ連回帰」、「ロシアの道」、「ユーラシア主義」の3つに腑分けし、明快に解説してみせる。
あらゆるメディアを信じず、机の上の「赤いファイル」だけを頼りに国の舵をとる69歳の孤独な独裁者は、どのような論理で蛮行を決断したのか…
日本人の目を開く一冊!
目次
第1章 何よりもまずソビエトを
第2章 カント、ピョートル大帝、柔道の哲学
第3章 傾倒する哲学者 イワン・イリイン
第4章 許しがたい世界の潮流
第5章 特別な国、聖なるロシア
第6章 ユーラシア主義の夢
第7章 偽りの友、ドストエフスキー
第8章 新しい帝国
第9章 野望の行く着く果て
第10章 ウクライナ侵攻への伏線
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
25
ロシア哲学を専門とするフランスの女性哲学者ミシェル・エルチャニノフ著書で、2022年発行の訳書。プーチンの研究書はかなり読み漁ってるので、プーチンに関して特に新しい話は無く、良く思想的変遷がまとめられているとの印象。ただ、プーチンの周りにいる権力者がプーチンおすすめの哲学書を必死に読んでいるとの紹介は結構新鮮で驚かされた。また有名なドストエフスキーの作家としてではなく思想家としての幅の広さは、認識しておらず興味が持たれた。ロシア思想での西洋への憧憬と反発の共存的歴史は、日本と同様であり親近感も少し覚えた。2025/05/26
バルジ
6
世界を驚きと恐怖に陥れた独裁者プーチンの思想的背景をロシアの思想家達の言説とともに探る1冊。訳は読みやすいが聞き慣れないロシアの思想家達が多く出てくるので読むのに少々難儀した。本書ではイワン・イリインやコンスタンチン・レオンチェフ、ニコライ・ダニレフスキー等主に「保守主義」的な価値観を抱いていた思想家の言説からプーチンが何を選び取ったかを丁寧に探っている。プーチンが好むのは「科学」的な装いを施した学説らしく、それらをかいつまみながらも自己の主張を正当化する道具として使用し、侵略を肯定する思考を作り上げた。2022/09/06
アーク
3
プーチン大統領ってひと言で言うと独裁者だけれど、その出自とか政治的な背景や思想とか、はたまた思考回路とか、本書で詳細にわたって知ることが出来た。時代に逆行する同性愛に関する反逆的なスタンスやウクライナ侵攻に至るまでの経緯など、何とも保守的で不気味な人物だね。この人に暗殺されたとおぼしきロシアのジャーナリストも数多いし。こういう独裁者には早くご退場願いたいな、と思った一冊。2022/09/10
じろう
2
たしかにプーチンの頭のなかを理解できる。ただプーチンだけでなく国民の中にもありそうなスラブ超ナショナリズム。ドストエフスキーやソルジェニツィンにもある。ユーラシア主義は中国があるから絶対にロシア盟主で成立しない。ヨーロッパの保守主義のリーダーになる野望は果たしてどうなのか。ナチスが各国にナチス亜流の追従者を出したのと似ているが極右政権がヨーロッパに誕生すればNATOのままロシア支持に動けるのか。無理だと思うが。2023/01/18
hoven
2
いろんな哲学者の引用をよくする。しかも自分の都合のいいところをつまんでる。この20年間で妄想的になったのは間違いないんだろう。索引がついてない、著者紹介が薄い。訳者あとがきがないなど、早急に出版したかったのだろうが、残念な製本。2022/12/14