内容説明
17カ国で出版決定!
自閉症ゆえに何も書けないと言われた14歳の少年が綴った、
まばゆい北アイルランドの四季、そして動植物たちとの1年間
「自閉症のぼくは、みんなより世界を強く感じられるらしい。
世界はぼくにとって色とりどりの炎のようで、ひたすら美しい。
ぼくはただ、ぼくの世界の感じ方を知ってほしかった。
世界がどんなふうにぼくを揺さぶるのか、知ってほしかったんだ」
――ダーラ・マカナルティ
ダーラ・マカナルティは、執筆当時14歳、自閉症の若きナチュラリスト。同じく自閉症の家族とともに、北アイルランドの自然を文字どおり全身全霊で体感していく。庭のえさ箱に集まる愛らしい小鳥たち。夜空に輝く星くずのような昆虫の群れ。滑空する猛禽類は雄大で美しく、樹齢300年の大木は果てしなく崇高だ。
教師から「自閉症ゆえに文章が書けない」と言われたこともあったが、「自閉症ゆえにみんなより世界を強く感じられる」というダーラ独自のまなざしは、小さな命のきらめきから、大自然のパノラマまでを鮮やかにとらえ、彼自身の世界の見え方・感じ方を私たちに体感させてくれる。
本書は、ウェインライト賞をはじめ複数の文学賞を史上最年少で受賞。また、ダーラは英国鳥類保護協会から最も権威ある賞(RSPBメダル)も史上最年少で授与されている。
<目次>
プロローグ
春
夏
秋
冬
用語解説
謝辞
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
R
42
自閉症の人が書いた日記。ナチュラリストでもあるので、自然への敬愛や観察する内容がたくさん出てきて、その描写の細やかさがよかった。他人とのコミュニケーションに難があるわけだが、文章ではこんなにのびのびと、判然と自身の考えを表明できるというのはすごいことだなと無理解を反省して、感心した。様々な運動に参加していたり、一流の学者とのやりとりができていることなど、凄いと思うことが多いんだが、さらにつっこんだ、著者ならではの着眼点なんかが見られる文章が読みたかったかもと思うのである。2022/10/27
ワッピー
39
図書館の新着棚からアピールしてきたのでお持ち帰り。父親以外のメンバーがすべて自閉症という5人家族の中で育ち、身の回りの動植物や猛禽類の観察など自然に関するブログが元になった本。自然観察とはいえ、19世紀の文人ジェフリースの「イギリスの田園」の長閑な雰囲気とはまったく趣を異にするもの。タイトルの通り、他との対話ではなく自分自身との対話で、思索や意見ももちろん、広い観察対象に圧倒的な情報量の多さが際立ちます。社会に適応して生きることにより、考えなくなった人間への痛烈な批判とともに、ティーンの自分が講演をして⇒2022/12/25
TATA
35
英国を構成する北アイルランドに生まれた主人公、自閉症というフィルターを通さずに見れば豊かな自然の色をしっかりと感じる少年ということなんだと思う。日々の生活やロンドンでの活動でストレスを感じるとの記載になるほどなと。いろんな思惑の中、アイコンとして使われることには確かに疑問を感じる。北アイルランドの色とりどりの自然についての文章を読んでベルファストに行けなかったことへの後悔が思い返されました。2024/10/13
ズー
15
学者並みの知識と観察力!そして恐るべき記憶力…!!!!!またそのシーンを体験できるぐらいの記憶力は想像以上。だから頭が処理しきれなくて、なかなか眠れないのかなとか考えてしまった。基本、アイルランドの自然をリアルに体験できる日記なのだけれど、所々自閉症による苦労も書かれていて、とても辛そう。ナチュラリスト代表みたいに担ぎ上げられている不満も書かれていて、そうだよな、政府は口ばっかりだし、子供すぐ利用するよなと思ったり。しかしダーラは子供なんて呼べないほど、知識も感受性も豊かでもう大人に思える。すごい人。2023/07/28
conyTM3
14
父親以外の家族全員(母、本人、弟、妹)が自閉症という14歳の彼が愛する北アイルランドの四季。 彼だからこそ捉えることができた瞬間と繊細な自然描写は、ドキュメンタリー映画になったら美しいだろうな。 野生生物とりわけ猛禽類への愛溢れる豊かな表現が顕著だが、それは翻訳者の方の力量によるところも大きいと思う。 自分自身についても深く考察していて、自己分析ひいては社会についての分析も鋭い。 仲良しファミリーが自分たちのやり方で絆を深める方法も微笑ましく、とりわけお母様の努力と深い愛情が伝わる。2025/02/13