岩波新書<br> 日米地位協定の現場を行く - 「基地のある街」の現実

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岩波新書
日米地位協定の現場を行く - 「基地のある街」の現実

  • 著者名:山本章子/宮城裕也
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 岩波書店(2022/07発売)
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  • ISBN:9784004319283

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内容説明

なぜ日本では米兵の犯罪を取り締まることができないのか.なぜ騒音被害や環境汚染を止められないのか.なぜ基地のそばで暮らしているというだけで数多くの悩みを抱えねばならないのか.――積み重なる「なぜ」の原因は日米地位協定にある.「国の専管事項」である安全保障が私たちの日常を脅かす.その実態と原因に迫る.

目次

はじめに
第1章 日米地位協定とは何か
日本側が把握できない米軍事故
日米地位協定の性格
日米地位協定の問題の整理
米軍による民間空港・港の使用
米軍基地の環境汚染・検疫
米軍の刑事・民事責任
規定なき在日米軍の飛行訓練
日米地位協定合意議事録
日米合同委員会
「思いやり予算」
米軍依存の安全保障
第2章 三沢基地 青森県
語られない基地問題
基地と「共存共栄」
「基地ありき」の街づくり
本来の自治のあり方とは
健全な危機感
集落内で分断
東京ドーム一一五個分の土地が未活用
「爆弾村」
訓練歯止め効かず
米兵は幽霊住民?
米軍向け住宅と「思いやり予算」
米軍版空き家問題
自動車税一億円超免除
燃料タンクが落下
「ゴネ得」許す補償制度
民間地で無断訓練
第3章 首都圏の米軍基地
東京の一等地にある米軍基地
都内の未返還施設は他にも
現在まで残る占領の遺産
幻の厚木基地返還
名ばかりの管理権移管
空母艦載機の訓練移転
街づくりに基地の影
綾瀬市長の基地共同利用策
第4章 岩国飛行場 山口県
「沖縄の負担軽減」決議
積極外交
地域振興に米軍機能誘致
基地と交付金
米軍の娯楽施設
山頂のブラックボックス
見せつけられたアメとムチ
違反切符が切れない
ミサイルに右往左往
特需なき基地周辺
第5章 自衛隊築城基地 福岡県
自衛隊基地のある福岡の小さな町
寝耳に水の自衛隊基地拡張計画
もう一つの基地拡張計画
当初から不信感
一二年前の「再来」
「緊急時の使用」といいながら訓練の可能性
疑問が残る「なぜ築城か」
数字を「盛る」
築城基地トップ「懇願」も……
背に腹は代えられない役所の事情
問題の根源に日米地位協定
基地の共同使用の問題点
日本政府の不誠実な説明
築城基地と福岡空港の「米軍基地化」?
第6章 自衛隊新田原基地 宮崎県
爆音緑茶
住民と自衛隊の歩み
進む「米軍基地化」
コロナ禍の基地外宿泊狂騒曲
確認書も曖昧な表現に
抑止力のない協定書
台湾有事を見すえたF35B配備
未実施の防音工事
工事遅延「法の壁」
五年前の「区域見直し」ネックに
人口減の引き金?
第7章 馬毛島 鹿児島県
危機にある馬毛島の漁業
FCLP移転
南西防衛という新たな名目
馬毛島探訪
無視される地元の民意
三宅島のFCLP反対運動
自衛隊は「金のなる木」?
沖縄の教訓
住民保護の欠落した南西防衛
訓練の制約がない日米地位協定
第8章 嘉手納基地 沖縄県
基地問題の縮図
沖縄戦の米軍上陸地
砂辺の「爆音」
宮森小学校米軍ジェット機墜落事故
移転第一号
米軍訓練の規定がない日米地位協定
「静かな夜を返せ」
近年は外来機も飛来
米軍関係者数の「実態」
「基地外基地」
行政サービスを住民が肩代わり
「ネイティブ爆音世代」
おわりにかえて
基地の島グアム
環境汚染の責任をとらぬ米連邦政府
在沖海兵隊のグアム移転
水道水を飲まない宜野湾市民
相次ぐ在沖米軍基地の汚染水流出
問題は日米地位協定?
資料 在日米軍施設・区域一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

67
中公新書の『日米地位協定』の著者と宜野湾出身の若手ジャーナリストの共著。初めにコンパクトに日米地位協定を解説してあるのが良い。取り上げた現場は三沢、厚木、岩国、嘉手納の米軍飛行場の他、自衛隊の築城、新田原、そして馬毛島。こうした共同利用される場所に目を向け、その基地と地域の関係を探っていく姿勢は、単に「反対」を唱えるのとは一線を画している。辺野古もそうなのだが、多様な現場の声を踏まえていかないと、基地の問題は見えてこない。その点北谷の砂辺出身の若者を「ネイティブ爆音世代」として取り上げているのは面白い。2022/07/21

風に吹かれて

16
 山本氏は琉球大学准教授、宮城氏は沖縄出身で、毎日新聞記者。2022年刊。  山本氏の『日米地位協定』(中公新書)を要約したかのような第1章で日米地位協定の概略を学び、以下、宮城氏をメインに日本各地の「基地のある街」のルポが続く。  「米軍基地問題」は「沖縄問題」であるかのように認識させられているが、そうではないことを多くの国民に知らせることが日本のマスコミの責任のひとつではないかと思った。 →2023/06/07

kan

15
沖縄だけでなく、三沢や岩国など各地の基地の街の現状と、住民の苦悩や葛藤や不安が冷静にまとめられていて読みやすかった。以前「本当は憲法より大切な日米地位協定」や「日米地位協定と基地公害」を読んだ時に日本は主権国家とはいえないと衝撃を受け、基地から派生する問題に関心をもっていたが、こちらは岩波新書らしく抑えた筆致で諸問題が解説され勉強になった。嘉手納基地の近隣の「基地外基地」の成り立ちと変遷や、より人口の少ない場所へ問題を送る馬毛島のことなど、行政対応や安全保障上の地政学的駆け引きもあり問題は複雑だと思った。2022/06/12

二人娘の父

11
中公新書『日米地位協定』の著者が若手新聞記者とともに探る日米地位協定の現実。前著は国際法上の課題などを探求する面が大きかったが、本書はまさに現場からの報告がメイン。「地位協定は条約であり、沖縄だけでなく日本全国の米軍基地がある自治体が当事者」という、当たり前だが意外と認識されていない事実が浮き彫りになる。三沢や築城、新田原など、今まで全国的には注目されていなかった地域の実情も貴重。先日も玉城デニー知事の話を聞く機会があったが、日本の政治がこの問題に向き合う政治であってほしいと心から願う。2022/07/16

ブック

10
日米地位協定の現実を知るにつけ、日本は戦争に負け、未だに占領政策がつづいていることを実感する。日本は見せかけの独立に国民が無関心なのをいいことに、戦後80年近くが経過しても本当の主権を取り戻していない。先の参院選の東京選挙区から立候補したなかむら之菊さんは、沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党という名前の党からの出馬だった。いったいどうすれば日本人は基地問題を本気で考えるのか。首都東京の海に米軍基地を引き取り、日々の爆音や墜落事故の恐怖を我が事にする以外ないかも知れない。いや、それでも気づかない可能性もある。2022/07/18

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