内容説明
「拡大」と「縮小」のはざまに、今をつくる鍵がある
「法」と「制度」のせめぎあいのなかで、「少しでも良い都市」を目指し展開してきた日本の都市計画。
スプロールからシュリンクに向かっていった平成期、想定外の災害に何度も直面しつつ、私たちはどのように都市をつくってきたのか?
規制緩和、コミュニティ、地方分権、復興などのキーワードを手掛かりに、“もっとも近い過去”の軌跡をたどり、現在と未来の行方を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろし
41
ここ30年の都市計画に関する政府、自治体、住民などの様々な動きを土地利用、景観、災害復興などの分野ごとにまとめている。「平成」は近々30年という意味合いで使われている。内容は著者の実体験に裏打ちされているので抽象的な話ではない。都市の土地にかけられた規制を「呪い」と呼ぶセンスは素晴らしく、文学的と思えるくらい。欲を言えば呪いを解く「魔法」の秘密について詳細を知りたいと思う。全般に2次元グラフを活用しわかりやすいが、「法」と「制度」の違いについては都市計画に従事していない人にはイメージしにくいかもしれない。2021/05/12
kenitirokikuti
5
図書館にて。都市計画法と全総(全国総合開発計画法)は別なんだなぁ。1968年の新しい都市計画法と、2006年の大改正。都市計画が、県から市町村に(大阪維新の根はこれかあ)。最近は当初の目的では機能しなくなっている「公民館、コミュニティセンター」ってなんなのかを知ることができた。コミュニティとは、アソシエーションの対概念で、コミュニティはつくることができる、という考えのもと導入されたが、現在は鈍いコミュニティと、尖ったNGO(アソシエーション)のネットワークが住民と行政を繋ぐプロトコルになっている。2021/05/16
そうき
5
都市計画の通史といえばあとがきでも言及される石田頼房の『日本近現代都市計画の展開』が有名だが、その終盤とその後にあたる平成の都市計画を論じる。法と制度、規制と設計という軸の設定は効果的で、目まぐるしく情勢が変化し、種々の法や制度が運用された30年の流れが整理できた。情報量が多いながらも読みやすく、また縮小時代に向けた希望も感じる本だった。帯の「都市計画の新たな基礎文献 誕生」の期待に応えてくれる良書で、今後この分野の定番書になりそう。 2021/02/11
roron
1
高層マンションが林立する駅前や巨大モールがある郊外の「どこかで見た」景観がどんな法律や社会情勢のもとに作り出されてきたか、噛み砕いた教科書のようでとても勉強になった。「制度」という言葉は馴染めないが、開発業者や市民、NPOが都市空間をつくるために果たした役割、それぞれの問題点も指摘されている。2023/03/25
すずゆー
1
都市計画の権力を「法」と「制度」の2つとして捉えているのが印象的だった。あとがきでも言及があったけど、この著者2軸4象限で考えるのが好きだよね。2022/08/19