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内容説明
小林秀雄の慧眼は批評を、分析でも悪口でもなく、愛情と感動だと喝破した。芸術に対峙し、心打たれることに意義を見出す。この近代批評の確立者も当初、生計を支える稼ぎ手として書く。東大新聞の下品な問いにも不機嫌さを隠さず応じた。一方で美に昏い世を警醒し続ける。人間的な素顔の窺える文庫初収録随想と入手困難だった批評を併せて収録。22歳から30歳まで、瑞々しい52編の文芸論集。(解説・池田雅延)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
16
小林の22歳から30歳までの52の論考を採録。曰く、批評とは愛情と感動である。巻末には112ページもの膨大な注解。文庫本ながら注の数は438にのぼる。新潮社のいい仕事。応援したくなる。2020/08/12
Iwata Kentaro
7
小林秀雄の良さは、その主張の中身というよりも、文体のリズムを音楽的に楽しむことだと思う。個人的には。2023/01/07
yutaro sata
7
一番若いときの仕事。苦しい、苦しいな。
たんかともま
2
小林秀雄は好きだが苦手なところもある批評家で、今回その両方の特性がよく出ていた。好きな部分は褒めるところ。解説であった作品を介して作者に会いに行き対話する、というスタイルがよい。そして批評も自分の作品という、ある種の創作物として楽しめるものを書いている点も好み。時代的という批評言葉を便利と両断しているのも痛快で、逆に自分が語れないことには口を閉ざすのもよい。批評に対する批評家のようだった。一方で不良学生らしいどこか生意気な文体と、飛躍しすぎて結果がわかりにくいものがあり、そこは苦手。結の部分が難しいのだ。2020/12/19
Lieu
1
私は文藝批評家としての小林秀雄のよい読者ではない。この本を読みながらなぜ苦手なのかを考えてみた。小林は批評家が精神分析やマルクス主義のような解釈の理論を持ち出すことを軽蔑する。それでは徒手空拳で作品を精緻に読みこんでいるかというと、そうでもないのである。文学研究者ではなく批評家だから自己を滅却してまで作品そのものに語らせる必要はないにしても、小説を読んで結論を下すスピードが速すぎる気がする。2021/08/10