内容説明
20歳以上であれば誰もが百円から楽しめる日本の大衆娯楽競馬。明治日本の欧化政策とも結びついていたその歴史は忘れ去られ、主に軍馬育成の観点からあわせて論じられることの多かった日本競馬史を様々な史料を駆使しながら刷新する画期的な論考。特に競馬興行主と陸軍との駆け引きや宮内省と陸軍の利権をめぐるせめぎあいなど、賭博が本質であるがゆえに詳しく論じられることのなかったリアルな物語を追体験できる書斎の競馬本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
119
軍用馬を欲した陸軍の馬匹改良目的で、明治の競馬は始まったとされていた。しかし、実質的な賭博である馬券を国や軍が容認してよいのか、当時は相当な議論があった。馬券を黙許しても競馬場で騒動が相次ぎ、賭博への忌避感から禁止されてしまう。それでも競馬の楽しさを知った国民的要求により、今日まで続く競馬の原型が成立するまでの軍や議会や新聞の動向、関係者の思惑が錯綜する状況は生臭く面白い。やがて国や地方の財源として不可欠になり、公営ギャンブルの成立に至った。ローマの剣闘と同じく一度知った娯楽の味を庶民は忘れなかったのだ。2025/03/28
ソングライン
16
日本競馬の黎明期の幕末から大正時代の競馬法の成立による勝馬投票券の正当化、大衆娯楽としての競馬の発展、そして太平洋戦争による戦前競馬の終焉へと続く近代日本競馬を資料に基づき丁寧に描かれる歴史書です。戦争のための馬匹改良が目的であった競馬、黙認されていた馬券が競馬法の成立で法律的にも赦されたこと、陸軍の勧める耐久性に優れたアラブ種より速度に勝るサラブレッドがファンの希望もあり主流になっていったこと、現在も使用されている競馬新聞の馬柱が日本固有ものであることなど知らなかった事実が満載でした。2022/11/02
スプリント
9
競馬をめぐる軍と民間の関係がよくわかった。 2025/03/16
kenitirokikuti
8
図書館にて。読んでないレビューだが、「おわりに」より。著者は1974年生まれ、関西大学4回生のとき軍事史への関心から軍と競馬の関わりをテーマに選ぶ。立命館の院に進み、02年北九州市小倉城庭園の嘱託学芸員に、04年に桑名博物館に。12年に館の紀要に県内競馬場についめ執筆。〈これで自分の研究としては一区切りをつけた、つもりだった。〉その後、細々と史料を集めていたが、〈そこへ、折りよく編集者Y氏から連絡をいただいた。[…]令和になり、ウマ娘ブームにわく時代である。[…]ぜひチャレンジさせていただきたいとお答え〉2022/09/17
しんさん
4
競馬と陸軍。これを機に、知見の幅を広げよう。世の中まだまだ知らないジャンルばかりだ。「馬券で中るのは、人の心を中るより六ずかしいぢゃありませんか(漱石)」。2023/03/11
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