内容説明
約140年前、その女性は、北海道十勝の原野へ渡った
オベリベリ――和人たちによって「帯広」とされた新天地
明治の先進教育を受けた彼女は、いかに生き抜こうとしたのか
開拓に身を投じた実在の若者たちを基にした、著者が初めて挑む長篇リアル・フィクション
〈明治維新という大きな時代の変わり目を体験した上に、それまでとまったく異なる世界に身を投じる若者たちの姿は、今、世界的な新型コロナウイルスの流行により、またもや大きな時代の変わり目を経験しなければならない私たちに何を思わせ、感じさせることだろうか〉――乃南アサ
文明開化の横浜で時代の最先端にいた女性は“その地”でいかに生きたか
私たちの代が、捨て石になるつもりでやっていかなければ
この土地は、私たちを容易に受け入れてはくれない
宣教師たちが開いた横浜の共立女学校に学ぶ鈴木カネは、父や兄にならって聖書の教えを受け、勉学に励んでいた。
兄の銃太郎は、神学校で一緒だった渡辺勝、依田勉三と北海道開拓について考え始めている。
彼らは勉三を中心に「晩成社」を興し、新天地へ向かう準備を進める。
明治15(1882)年、23歳になったカネは女学校を卒業し、渡辺勝と結婚、そしてオベリベリとよばれた帯広へ行くことを決意する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
47
久々の乃南氏の作品を堪能、北海道帯広を舞台にした史実を元にした開拓者の物語です。依田勉三は昨年テレビの特集である程度は知っていたが乃南氏にかかるとガラッと変わってしまった。男たちより女の強さがこの物語を際出せている主人公の渡辺カネの明るさに元気付けられ辛いことがあってもがんばれそうです。改めて乃南氏の女性の描き方に感服します、北海道なのでアイヌとの交流もありその関わりも下巻でもありそうだ。依田勉三のお坊っちゃま気質は少し不愉快な部分がありその後の晩成社もどうなることやら。2023/12/16
piro
41
文明開花の時代、未開の地・北海道オベリベリ(現帯広)に開拓民として渡った晩成社の人々の姿を一人の女性の視点から描く物語。横浜の女学校を卒業した鈴木カネは、没落士族の娘とは言えお嬢様育ちと言える存在。そんな彼女が兄やその友人らと共に開拓民として生活していく事は相当に厳しい事だったと思います。過酷な気候やバッタの被害に悩まされながら「晩成」を願って日々開拓に勤しむ人々。その姿が克明に記された史実に基づくフィクションは、今の帯広を知る者からすると胸が熱くなるお話でした。開拓はまだ途上。下巻が楽しみです。2023/01/29
小太郎
34
明治に初めて十勝地方に入植した人たちの大いなる叙事詩。 はじめはちょっと薄味かなと思ったんだけど、そこは乃南アサ抜群のストーリーテリングで読み手を惹きつけます。主人公のカネの艱難辛苦を彼女と一緒に体験しているような気になります。「ゴールデンカムイ」や「熱源」「蝦夷地別件」「静かな大地」「赤い人」などを思い出しながら久しぶりに北海道開拓とアイヌに人たちのことを思いながら読みました。さあ下巻へ2022/09/06
Kei.ma
16
初めて神は天地を創造した・・・。聖書を手にしたカネは、夫渡辺勝を追い船旅にでた。向かう先はオベリベリ。太古の昔から人の手が加わったことのない大地へ。そこでは何もないところから暮らしを作っていくことに。明治16年、オベリベリこと帯広に入植した人々。主人公カネがたいそう神々しく映る。それは、生死が際どくなるほどの極限の寒さや空を黒く埋め尽くすほどのバッタの大群が植物を襲う様さえ、粛々と書かれたせいからか。小さな体だが、頼りになるのは己の意志のみ。読者は、こんな気品に満ちた本との出会に感謝した。2022/08/12
マダムぷるる
12
予備知識ゼロで読み始めた。このお話が史実に基づいて描かれ、登場人物もほぼ実名ということにまず驚いている。鈴木(渡辺)カネの目線で描かれた帯広開拓の晩成社の物語。淡々と抑えた雰囲気で描かれるカネの日常は北の空気感を伴って更に冷たく感じられた。途中登場するアイヌの言葉が気になってアイヌ語辞典など検索しつつ読んだ。横浜の女学校で学び、都会で育ったお嬢さんが予想もできない世界に飛び込んでいき、村の人やアイヌの人々と交わり、日々を過ごしている。そんなカネさんに感心しながら下巻へ続く。2024/08/10
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