競争入札は合理的か - 公共事業をめぐる行政運営の検証

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競争入札は合理的か - 公共事業をめぐる行政運営の検証

  • 著者名:渡邉有希乃
  • 価格 ¥4,620(本体¥4,200)
  • 勁草書房(2022/07発売)
  • ポイント 42pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784326303106

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内容説明

公共事業は税金でまかなわれる。なので価格を抑えるために競争入札が行われるが、日本の公共工事調達では入札での競争が制限されている。本書では、このような競争制限によって、行政が低価格・高品質の工事を得るための情報コストを削減し、行政運営上の合理性を高めているのか、理論と実態の両面から実証していく。

目次

序章 日本の公共工事調達と「競争」

第1章 日本における公共調達制度改革とその背景
 1 日本の公共調達──現行制度の概要
 2 日本の公共工事調達制度の変遷──制度運用の基礎づけから調達制度改革まで
 3 本書の問い

第2章 先行研究の検討──これまでの研究は何をどう論じてきたのか
 1 土木建築部門のレントシーキングと競争制限
 2 市民の全体利益と調達・入札制度の設計
 3 制度をめぐる二つの意思決定過程と三種類の合理性
 4 本書の視角──競争制限的制度の合理性に迫るために

第3章 公共工事調達を分析する枠組み
 1 意思決定活動としての公共工事調達
 2 意思決定の取引費用
 3 分析枠組み──競争入札の万能性を問い直す

第4章 落札価格に対する上下限基準の設定──競争をめぐる「ダブルスタンダード」はどのように説明されるのか
 1 本章の問い──落札価格の制限はなぜ必要なのか
 2 本章の検討視座──「合理性の限界」への着目
 3 理論的な検討──「満足化」による情報コスト削減
 4 実証的な検討──実務担当者の認識を手がかりに
 5 結論──限定合理的戦略としての一貫性

第5章 参入要件設定による応札数の抑制──顕在的競争性の低さは何を意味しているのか
 1 本章の問い──行政はなぜ応札数を抑制するのか
 2 本章の検討視座──調達の取引費用は「単なる事務コスト」なのか
 3 理論的な検討──「問題の逐次的処理」による情報コスト削減
 4 実証的な検討──再度入札と低入札価格調査に着目して
 5 結論──応札数抑制による低価格・高品質の両立的追求

第6章 地方自治体における最低制限価格制の利用──ローアーリミット制はなぜ二種類あるのか
 1 本章の問い──最低制限価格制は必要か
 2 本章の検討視座──制度に内在する機能への着目
 3 理論的な検討──低価格落札か調査負担の回避か
 4 実証的な検討──自治体ごとの制度運用規定を手がかりに
 5 結論──発注者の情報処理能力に応じた二制度の使い分け

終章 競争制限の「合理性」とは何なのか
 1 実証分析のまとめ
 2 本書の結論──競争の制限と低価格・高品質の両立的追求
 3 示唆──競争制限をめぐる「三種類の合理性」
 4 本書の限界と今後の課題

付録 「公共調達制度の運用・意義・業務量に関する調査」調査票および回答の集計結果
あとがき
参照文献リスト
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゲオルギオ・ハーン

29
競争入札は価格と品質を最適化するためにどうして競争者数に制限をかけるのかという疑問から始め、感情論を抜きに競争入札制度の合理性を分析したクールな一冊。基本に忠実に先行研究を分析することからはじめている。従来は「一部の利益を追い求めているだけではないか(要は癒着や談合が目的)」という視点だったが、そもそも制度として設計し、今でも運用している合理的な説明はなにかというシンプルで鋭い指摘をしている。感情的になりやすい(安易な行政批判に靡きやすい)テーマのためか従来は冷静な分析が少なかったというのは意外だった。2022/04/08

土橋俊寛

1
本書は、意思決定論の視点から競争制限的な公共工事調達の合理性を分析した労作である。「現行制度が事業者の選出にかかる取引費用を削減する」という本書の主張は、緻密な論理展開と実証分析により十分に裏付けられている。それにもかかわらず、私は本書を読んでいていくぶん物足りなさを感じた。おそらく、結論がありきたりと思える分析がしばしば散見されるからだろう。2023/04/29

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