新潮クレスト・ブックス<br> ペンギンの憂鬱

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新潮クレスト・ブックス
ペンギンの憂鬱

  • ISBN:9784105900410

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内容説明

恋人に去られ孤独なヴィクトルは売れない短篇小説家。ソ連崩壊後、経営困難に陥った動物園から憂鬱症のペンギンを貰い受け、ミーシャと名づけて一緒に暮らしている。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたヴィクトルだが、身辺に不穏な影がちらつく。他人の死が自分自身に迫ってくる。ウクライナはキーウ在住のロシア語作家による傑作長編小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

605
この小説のプロットにとって、ペンギンは必要か。終盤では一応の役割はある。しかし、それまではプロットの一端をも背負うことはない。にもかかわらず、ペンギンは不可欠の存在なのだ。ペンギンなくして、この小説世界が成立しないくらいに。ヴィクトルとペンギンの互いに孤独な生。そして、ソーニャやニーナとの疑似家族。あるいは、編集長との、そしてまた警官のセルゲイとの、はたまた謎の男ミーシャとの関係性も距離もまた希薄だ。ヴィクトルにしだいに危機が迫るサスペンスでもある。にもかかわらず、飄々とした軽快さを持つ不思議な小説だ。2016/12/03

遥かなる想い

382
ソ連崩壊後のウクライナを 舞台に、新聞の死亡記事を 書いて暮らすヴィクトルと ペンギンの奇妙な日々を 描く。 一体何が起こっているのか? 全編に漂う不穏な空気と、 ペンギンとの生活との アンバランスさが、逆に この「社会の憂鬱さ」を 際立たせている。 ニーナとソーニャ、そして ペンギンとの家族ごっこの裏で秘かに進行する 真実とは何なのか… ペンギン「ミーシャ」の存在と、「十字架の意味」… この対比が 奇妙な緊張感を読者に 与えながら物語は進んで… 最後は何故か微笑んでしまう、 不条理で奇妙な物語だった。2015/07/18

pino

161
悪夢を見た。正体のみえない人に追われるハード系で、ペンギンの登場なしの空恐ろしさだ。本当に嫌になる。さて私が持ってるソ連崩壊前後の情勢についての知識量は、マッチ箱の引き出し程度のショボさ。ニーナの振る舞いから当時の記事を思い出す。「今や乙女はドンファンの手に簡単に落ちている」と。一方、ヴィクトルは付き纏う影を遠ざけるように次々と仕事を受ける。敢えて感覚を麻痺させているのか。一体、人も金もどこから現れどこへ消えるのか。物語の設定を楽しみつつ闇の世界に身震いする。救いは、ペンギンの研究に没頭した老人の尊さ。 2015/07/28

まふ

151
ウクライナ作家のロシア語による物語。1990年代、ウクライナが独立して間もない不安定な時期に、主人公で作家のヴィクトルが新聞社の編集長から<まだ死なない有名人の追悼文>のストック作成を依頼され編集長の好評を得る。彼はペンギンを動物園から譲り受けて飼育しているが、友人が幼い女の子を残したまま死んでしまったため、その養育係となった警察官の姪と疑似家族のような生活をつづける…。ウーン、ふしぎだ、と思いながら読んでいくと、やはりこれしかない、と思われる終わり方となった。ブラック・コメディの逸品である。G1000。2023/09/12

ケイ

151
再読。読書会にむけて。レニングラード生まれ、キエフ育ちのロシア系ウクライナ作家。ロシアとウクライナの関係をよく把握していなかった初回に読んだ時と比べ、不穏さに終始心落ち着かず。編集長はどちら側なのか?自問しながら読むが、そのあたりがはっきり分からないところがいいポイントなのかもしれない。そして、読者会を終えたあとで、二国の関係や ウクライナの国内情勢が分からずとも、ただ不穏な空気が漂う、少しコミカルな小説としても読めることに作品としての大きさを思った。続編の英訳は見つけたので、読んでみたいな。2020/01/12

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