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内容説明
国民の約八割が信仰するヒンドゥー教と、少数派とはいえ有力な宗教が同居するインド。悠久の歴史において多くの宗教が生まれたこの地はまた、何度も外来の宗教勢力から侵略を受けたが、他宗教による攻撃すら飲み込みながらヒンドゥー教は拡大してきた。いく筋もの支流が集まり大河となるように、枝から延びる木根が幹となって大樹になるバニヤンのように……。仏教、ジャイナ教、ゾロアスター教、シク教、キリスト教、イスラム教など、ヒンドゥー教の歴史的ライバルとの対立や融和の関係から、インド文明を読み解く。
目次
序章 比較文明学と宗教
復活する近代以前の文明
インド文明とは何か
外来宗教の相克さえ多様性
第一章 ヒンドゥー・ナショナリズム
インドの根幹
ヒンドゥー・ナショナリズムと南アジア
宗教ナショナリストの主張の背景
ムスリム側の意識
過剰な仕返し
第二章 ヴェーダの宗教、バラモン教、ヒンドゥー教
ヒンドゥー教の循環的性質
多源的神々が収斂するヒンドゥー教
ヒンドゥー教へいたるホップ・ステップ・ジャンプ
通奏低音としてのダーサの宗教
征服者の聖典『ヴェーダ』
多次元的な構造の根源
遊牧民の宗教からの変容
保守と革新のウパニシャッド
契機はインドの「都市化」──バラモン教前期
神学の体系──ウパニシャッドと六派哲学
文学が作った信仰形体──輪廻思想と業
国教化と聖典編纂──バラモン教中期
タントリズムの時代──ヒンドゥーの形成
第三章 バラモン教とインド仏教
仏教とバラモン教の鳥瞰的把握
1 ウパニシャッドの申し子
ブッダ誕生の社会的背景
長寿だったブッダ
反バラモンとしての仏教
根本思想は、対立を超えること
ゴータマ・シッダールタ一度目の悟り
二度目の悟りと梵天勧請
神仏習合型宗教へグレードアップ
ブッダの聖遺物崇拝と仏教の展開
仏教教団の根本分裂
枝葉分裂と部派仏教のアビダルマ
民衆を巻き込む「説話」による運動
2 大乗仏教の意義
大乗仏教発生前の仏教
大乗仏教の鳥瞰的理解
大乗仏教の史的背景
百花繚乱の大乗仏教──文明融合の果実
脱インドの普遍宗教へ
文学作品的な大乗仏教経典
シルクロード交易が生んだ龍樹とマニ
シルクロード交易の衰退と大乗仏教の方向転換
大乗思想の確立
空の関係性
仏教とバラモン教の相互作用
仏教のバラモン教化の背景
ヒンドゥー教化する仏教
密教とはいかなる仏教か──後期大乗の姿
雑密と純密
悟りと儀礼の一体化
北へ東へと広がる密教
インド仏教の復興
アンベードカルの新仏教運動
第四章 シク教の理想と挫折
シク・ディアスポラ
創始者ナーナクの思想背景
ナーナクの人生と思想
倫理的生活の強調
ヒンドゥーとイスラム、両方の言葉を用いる
共同体に生きる倫理
ナーナクのカースト批判
ムガル帝国の横暴とシク教の倫理
ナーナクの後継者アンガド
シク教団組織の形成者
軍隊組織化するシク教
シク教徒の名前に「シン」「コール」が多い理由
第一一代は意外なグル
パンジャーブの覇者へ
苦難とその克服
シク教のデアスポラ
独立を巡るシク教の役割と不遇
第五章 ジャイナ教、ゾロアスター教、キリスト教
1 ジャイナ教
仏教の姉妹宗教
似ているけれど大きな違い
堅牢な教団組織
裸形派と白衣派
厳しい戒律が教団を存続させた
2 ゾロアスター教
ペルシアを捨てインドへ
人類最古の創唱宗教の世界観
ゾロアスター教と仏教
ペルシアを逃れたパールシー
パールシーの代表的な存在、タタ財閥
鳥葬
3 キリスト教
いつインドに入ったか
東方教会とカトリックの確執
貿易上の必要から守られたキリスト教徒
イギリス支配
第六章 イスラム時代のインド
インド・イスラム研究の意義
インド・イスラムの思想的特徴
政治・経済的野心と宗教的情熱──二つの流れ
地域経営を考えた征服
イスラム的な寛容思想
中央アジアから攻めてくる王朝
多神教と共生するスーフィズム
スーフィーの融和思想とイスラムの拡大
スーフィーの教団組織化
民衆のスーフィー
スーフィーの諸宗教共生の思想
ムガル皇帝アクバルのスーフィズム
アクバル帝の宮廷文化
ダーラー・シコーの融合思想
ムガルの衰退と西洋インパクト
インドとパキスタンの分離独立
パキスタンに流れ込んだ難民
不安定要因としてのイスラム
第七章 仏教盛衰の比較文明学的考察
インド亜大陸における仏教の衰亡
インドに仏教は生きているか
仏教の独自性
インドに仏教が誕生した意義
平等思想の役割
玄奘が伝えたエフタルの仏教弾圧
エフタルの仏教入信
呪術仏教
バラモンの王を追い出した仏教徒の団結
バラモン教による弾圧と改宗の強要
ベンガル地方の仏教衰亡
ムスリムを受け入れた仏教徒
バルマク家の改宗とその背景
あとがき
参考文献
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