岩波新書<br> 学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か

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学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か

  • ISBN:9784004319252

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内容説明

二〇二〇年一〇月一日,時の首相・菅義偉は,日本学術会議から新会員として推薦を受けた一〇五名のうち六名の任命を拒否した.この民主主義や法から学問のあり方にまで禍根を残した事件から一年半.しかし,いまだ問題は終わっていない.日本社会の矛盾に直面した当事者六名が,その背景と本質を問う.

目次

はじめに(岩波新書編集部)
1 学術会議会員任命拒否問題の歴史的な意味(岡田正則)
1 日本学術会議の設置と任命拒否に至る経緯
2 任命拒否の違憲性と違法性
3 首相による任命拒否理由の説明
4 問題の背景
直接的な背景
日本特有の事情
各国に共通の事情
5 問題の深層
ガリレオ裁判と任命拒否問題
科学的な自然理解と社会の統治原理
6 情報公開と自己情報開示の請求
7 展望
2 現代日本と軍事研究 日本学術会議で何が議論されたのか(加藤陽子)
1 はじめに
2 天皇機関説事件の争点
3 決裁文書と止めた政治主体
4 二〇一七年声明と戦争・軍事を目的とする研究に反対する過去二回の声明
5 安全保障と学術に関する検討委員会での討議
6 学術会議は何を代表するのか
7 「自衛」概念を定義することの困難性と議論の帰結
8 学術会議の在り方をめぐって
9 科学・技術を育む政治文化を目指して
3 反憲法政治の転換を(小沢隆一)
明治憲法下の学問と教育
日本国憲法二三条の意義
学術会議の目的と独立性
道理のない任命拒否
学術会議事務局の文書について
反憲法政治の転換を
4 日本学術会議会員任命拒否事件の現段階(松宮孝明)
岸田政権と「任命拒否」
任免拒否のために持ち出された法解釈
憲法一五条一項は公務員選任の「一般条項」ではない
憲法の曲解による総理独裁
任命拒否の背後にある学術軽視
繰り返されるコロナ禍対策の失敗
学術軽視がもたらすもの コロナ禍対策と「共謀罪」を例に
学問の自由と学術政策
学問の自由は研究成果の公表の自由を含む
「学術会議のあり方」問題と「ステークホルダー」
「選択と集中」あるいは「成果主義的資源配分」政策の問題性
学術と政治のあるべき関係
任命拒否事件の現段階
5 ポスト真実の政治状況と人文知(芦名定道)
1 はじめに
2 「ポスト真実」を掘り下げる
3 知恵思想から人文知へ
4 再度、日本学術会議問題へ
5 むすび 大学、ジャーナリズム、そして人文知
6 政治と学問、そして民主主義をめぐる対話(宇野重規)
1 「反政府的」であるとは、どういうことか
2 「学問の起死回生」に向けて
関連年表
巻末資料

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

1.3manen

57
戦争に対して学問はけっして関わってはいけない。原爆は物理学の知見で多くの被爆者を産んでしまった。そして、菅内閣、岸田内閣でも、ウクライナ戦争下、スーダン紛争など、現在進行系で進む問題である。日本人として日本国憲法の規定を真摯に受け止め、学術人が独立して世の中の進化に加担し、戦争という国家権力による利用にあわないことを期待したい。2023/04/21

崩紫サロメ

19
2020年に菅内閣により起こった学術会議任命拒否問題。本書は任命拒否された6人による共著。専門分野も異なり、論じる形態も異なるが、「学術会議とは何か」「学問の自由とは何か」という問題に、当事者として切実に論じている。加藤陽子はこの件に関して「時の権力が「何が正しく、何が間違っているかを決めている」点を問題としている(p.36)。また、学術会議は科学者の代表ではなく、社会に対して全科学者の責任を集約する一つの主体とした吉川弘之の言を挙げ(p.55)、強い危機感を示す。2022/06/18

おおにし

16
(読書会課題本)学術会議任命拒否問題とは何かを知りたくて本書で6名の主張を読んだが本質をすっきりと理解できなかった。拒否の根拠が内閣府から示されない以上推測するしかないのだが、軍事研究に反対する大学や研究機関に恫喝することが第一目的であったのだと思う。軍事的安全保障研究については、加藤氏が言うように、大学の学部を新設して国民の目から見える形で軍事研究をするというのも一つで、そこには人文社会系研究者も参加して、科学・技術社会論という学問領域を形成していくのが良いと思う。2023/03/14

ユーユーテイン

7
日本学術会議任命問題で、任命拒否となった6名の学者が寄稿した文章集。政府は任命拒否の理由を説明していないことを改めて知った。理由が明らかになっていないのを、このことが理由かもしれない、と拒否された側が述べることは「忖度」を招くので有害ですらある、と宇野氏は言う。一方、これは人事の問題であり任命拒否の理由を細々と説明する必要はない、という意見もある。学問の自由は守られるべきだが、日本学術会議という組織は必要なのだろうか?組織の有無に関わらず、学びたい人が、平和を求めて自由に学問ができる環境整備を望みたい。2022/11/23

林克也

5
一つ一つ納得しながら読んだ。今回、山上容疑者がパンドラの箱を開けたことにより、この本で6人が述べている内容がより一層確かなものになり世の一般の人にもわかりやすくなってきたのではないかと思う。 宇野重規さんの章から引用。 「混ぜたら危険」ということさ。権力分立を破れば暴政になるし、政教分離を犯せば宗教支配になる。きちんと「線を引く」ことが大事だ。おそらく暴政や宗教支配で苦労してきた人類の知恵なんだろうね。2022/08/04

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