内容説明
どうして人間以外の生き物は若返ろうとしないのだろう?
イネにとって老いはまさに米を実らせる、もっとも輝きを持つステージである。人間はどうして実りに目をむけず、いつまでも青々としていようとするのか。実は老いは生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略なのだ。次世代へと命をつなぎながら、私たちの体は老いていくのである。人類はけっして強い生物ではないが、助け合い、そして年寄りの知恵を活かすことによって「長生き」を手に入れたのだ。老化という最強戦略の秘密に迫る。
「国私立中学入試・国語 最頻出作者」3年連続1位(日能研調べ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
112
稲垣先生の本は、読みやすく、分かりやすくて、ホロっとなって、とてもいい書き手だと思う。売れっ子著者なのだろう、数多くの出版社から次々に新刊が出るが、最近、どうも内容が重複しているところが気になる。細胞分裂から生殖への進化、オスとメスの分化を踏まえて、生物における「老い」の意味、「死」を獲得した意味と、とても説得力のある解説が展開されるが、少しづつ趣向を違えながらも本筋は同じ著作を何冊も読むのは、少し辛い(買う前にきちんと確かめろと諫められそうだが…)。本書は、中公新書ラクレらしく読みやすいのが特徴。2023/11/11
なお
50
本書は老いる事を「人間にとって生き残る為の戦略」であると言う。著者は静岡大学大学院農学研究科教授。科学的に他の動植物と比較し、人間が進化の過程で何故老いて死ぬという選択をしたのか論じている。全ての動植物は種を絶やさない為の戦略を持っている。その中で人は生まれただけでは生きていけない生物。年長者によって育てられ生きる為の知恵を学ぶ。だからこそより経験を積んだ老人は大切な存在との説が有り難い。人類は「老い」を勝ち取りその実りを活かす事で発展を遂げた。死は種にとって存続していく為に意味のある事だと書かれている。2024/02/17
クリママ
48
38億年前に誕生した生物。分裂で増える単細胞生物は死なない。死の起源は18億年前。本能で生きる昆虫などは、昨日まで元気だったのが、生殖が済めば即座に死ぬ。知性で生きる哺乳動物は、親が子に生き方を教える期間が必要なので、その間は死なない。祖母がいるのは、ヒト、ゾウ、シャチの3種だけ。祖母がいれば、その集団の寿命が延びる。よくわかったけれど、老化についてはまだ解明されていないようだ。終章は、精神論的な。う~む。盛んな時期に死ぬのは辛いだろうな。衰えていくのは、穏やかに死ぬための準備なんだろうな。2024/09/08
けやき
43
生き物は何故老化するのか?人間が長生きする意味とは?結論は分からないということだったが長生きしてみたくなる本でした。2022/06/13
kan
28
いつもの稲垣先生節が炸裂する。なぜ人間は、若々しく死ぬセミや、役目を果たすと死ぬ鮭などの生き物とは異なり、不思議な「老い」のステージがあるのか。コメの実りや、年輪を重ねる巨木や一年生植物を引き合いに出しながら、自由でめでたい老いのステージを許された人間へ温かく穏やかなエールに満ちた一冊。内容としては、別著と重なるテセウスの船や遺伝子の乗り物としての生物という観念が通底し、大仰な「生きる意味」などなく生かされているのだなあと宗教的・哲学的な視点を得られる。帯で著者が人気エッセイスト扱いなのに笑ってしまった。2024/03/20
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