内容説明
どこへ行くにも、棺桶の仕度なンかいらないじゃないのと、無鉄砲な旅ばかりしていました――一九三〇年、総督府に招かれた台湾から、『放浪記』の印税をつぎ込んだシベリア鉄道でのパリ行き、一番好きな街北京など。肩の張らない三等列車の一人旅を最上とする著者の一九三〇年代前半の紀行を集成する。文庫オリジナル
〈解説〉川本三郎
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ori
15
「台湾漫遊鉄道のふたり」の日本人作家は林芙美子がモデルであると聞いて、彼女の旅行記を。大変に好奇心旺盛な人だったんだなあ。戦前にによく女1人でたいしてお金を持たずに台湾、樺太、中国、ロシア、パリなど行ったものよ。どうせ現地で新聞社の人とか日本人コーディネーターみたいな人がいるんでしょ?と思いきやさにあらず。シベリア鉄道の3等でやかんなど持ち込みパリへ。このシベリア鉄道の中の話が一番面白かった。まさに放浪者。度胸と逞しさがすごい。パリでお金に困ると現地で原稿書いてお金を稼いだとかノマドの走りじゃん。2026/08/11
和草(にこぐさ)
11
1930年代にこれ程の1人旅をした女性! 旅したことが血肉になっている。2023/02/10
ひでお
10
林芙美子の紀行文。この時代に女性一人旅、しかも三等車で旅するなど想像を絶します。一方でこののちに林芙美子が従軍作家として日本軍に同行したことはよく知られていることで、若干その雰囲気を漂わせているところもあります。本人とすれば国家の体制よりも自分の書きたいように書いて行きたい所に足を運んでいるのだと思いますが・・・。そういう自由奔放さがこの人の魅力で、現代の作家さんにはない生命力にあふれているように思いました。2023/03/07
さっと
9
いくつかのアンソロジーでつまみぐいしてきたフミコさんの紀行文をいよいよソロでいただく。とにかく良いことも悪いこともなにもかもあけすけである。歩いていれば元気が出てくるだろうと、少しでも時間があれば改札を出てまちをひとまわりしてくる。そんな宿命的な放浪者も意外や激しく落ち込んで弱音を吐くこともある。「パリーへ来るまで...来てまでも、私は沢山の深切なゆきずりのひとを知りました、何しても報いられないのですが、そのままお互いがお互いを忘れ果てて行くのでしょうか...」(シベリヤの三等列車)の旅情は痛切である。2023/12/23
nonicchi
8
林芙美子は小説よりも随筆、特に旅ものが好きです。本書も「シベリアの三等列車」「樺太への旅」「北京紀行」は既読でしたが、台湾への旅等、初出が何本もあって嬉しい一冊。゙愛国心を持で等、時代の価値観が表出する箇所はありますが、戦前植民地だった台湾、樺太、満州の人々の様子、風俗が活写され、貴重な資料と思います。「放浪記」の印税を持ってパリまでの貧乏旅行、当時の女性では破格の度胸と行動力、旅(放浪)が彼女を作っていたんだな、凄い、と出無精の私はただ感嘆するのみ。2024/07/05




