講談社+α新書<br> 「正しい戦争」は本当にあるのか

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講談社+α新書
「正しい戦争」は本当にあるのか

  • 著者名:藤原帰一【著】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 講談社(2022/05発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065285763

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内容説明

「ぼくは抽象論が嫌いなんですよ」ーーそう宣言して、「戦争と平和」について論じた名著を、新書版として復刊。
経済のグローバリゼーションによって世界中のサプライチェーンがつながったことで、大規模な戦争が「不合理」なものと思われていたいま、なぜロシアは侵略を開始したのか。
独裁的な指導者ひとりの個性や、権力への渇望だけでは説明できない戦争の深層を語りつくす。
もはやあと戻りできない歴史の転換点に立ち、日本最高の知性の一人が洞察する。

「核は使えない兵器ではなく、大規模な兵器に過ぎません」
「〈力〉から〈民族〉へ、〈民族〉から〈デモクラシー〉へという流れが、まさに新しい対立を作っている」
「政治でも経済でも、お金持ちのグローバリズム、貧乏人のナショナリズム」
「東西の緊張が高まるとヨーロッパは戦場になっちゃう」
「米ソが同じ側にいるってことは、地域紛争に大兵力を駆使できるってことです」
「冷戦が終わったことじゃなくて、こういう終わり方をしたことがあとあと尾を引いた」
「小規模で短期の戦争を伴うと、戦争という行動は合理的なんだというふうに考えられちゃう」
「自由主義っていうのはヘタをすれば戦争抑制どころか、これまで以上に強い軍隊を生み出した」
「自分たちが侵略されてもいないときの軍事行動は、単純に侵略戦争以外のなにものでもない」
「平和はお題目じゃない。必要なのは祈る平和じゃなくて、作る平和です」

目次

第一章 「正しい戦争」は本当にあるのか
正戦論の起源
国際政治の〈リアリズム〉
〈正義の戦争〉による世界分裂
戦争を否定する論理
〈正義の戦争〉は美辞麗句にすぎない
「ナチの再来だ!」と叫ぶ偽善性
ぼくは〈絶対平和論者〉ではない
集団安全保障の本来の意味
反戦のプラグマティックな実現法
イラク戦争に無関心な日本人
経済合理性からいって米軍は必要ない
軍需産業は競争力がない
ラヴ&ピースだけじゃダメなんだ
カナダとアメリカが戦争しないわけ
地域紛争ーー牛泥棒事件を解決するには
どの国も戦争したい、わけじゃない
大人の平和主義
第二章 日本は核を持てば本当に安全になるのか
いまや核抑止は成り立っていない
アメリカは核を使うつもりだ
インド、パキスタン、イスラエルの核兵器
ミニ・ニューク
核を持ってたら平和が実現するなんて大間違い
インドの失敗
〈戦略論〉なんてちっとも合理的じゃない
なぜ核はこんなに増えてしまったのか
南アフリカが核を廃棄できたわけ
アメリカの核の傘は確かにあてにならない
核兵器が安上がりなんてウソだ
第三章 デモクラシーは押しつけができるのか
いまや民主化は世界標準だ
国家の条件1〈軍事力〉から〈民族〉へ
ヨーロッパ人は民族主義を暴力の源泉と見ている
国家の条件2〈民族〉から〈民主主義〉へ
アメリカが世界を民主化しているなんて大間違い
民主化に必要なのは内側の反政府運動だ
問題は民主主義でなく、その押しつけ
他者という問題ーー寛容こそがデモクラシーだ
お金持ちのグローバリズム
グローバリゼーションはアメリカの陰謀、とは言えない
勝ち組につきたがるのがグローバリズム
グローバル経済は従属構造か
グローバリゼーションと貧困
グローバリゼーションがテロを生むのか
戦う貧乏人から静かな犠牲者へ
第四章 冷戦はどうやって終わったのか
資本主義は七〇年代には勝っていた
経済がダメだったから冷戦が終わったわけではない
ゴルバチョフの外交革命
ゴルバチョフはなぜ江沢民になれなかったのか
実はアメリカの影響力は一時低下していた
東欧の堤防決壊
ゴルバチョフは自分の急進性に無自覚だった
逃げ出してすぐ座っちゃう〈英雄的人民〉
アメリカの圧力で冷戦が終わったわけではない
湾岸戦争で新しい秩序がはっきりした
ドイツの決断ーー「国連もアメリカも」という選択肢
「冷戦はアメリカが勝った」史観の形成
EUはドイツを抑えるためでもある
どこまでが〈ヨーロッパ〉か
冷戦は戦争を否定しないで終わった
第五章 日本の平和主義は時代遅れなのか
平和主義は理想主義か
平和主義の限界
第六章 アジアの冷戦を終わらせるには
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

103
2003年のイラク戦争後に出版された書籍の改題新刊。20年の間に国際情勢は大きく変わり、時事的な内容はもう参考にならない。でも、ここに語られる戦争・平和に対する藤原先生の確固とした信念には、時間を超えた普遍性がある。「正しい戦争」などありえない。戦争を否定することで、その否定すべき戦争を起こした側に対する制裁が正義になるパラドックス。平和とはそんな綺麗ごとではなく、「汚い取引や談合を繰り返すことでやっと保たれる打算に満ちた老人の知恵」のようなものだと言う。勇ましい正戦論が飛び交う今こそ、深く考えてみたい。2022/07/14

おやぶたんぐ

3
内容自体は20年前のもの。しかし、表題のほか、日本は核を持てば安全になるのか、日本の平和主義は時代遅れか、アジアの冷戦を終わらせるには等々、むしろ今こそ読み応えがあるかも。対談形式であることも手伝って、今般読んだ著者の本3冊の中では1番読みやすいと思われる。日本の平和崇拝陣営も軍事崇拝陣営も実はベクトルの向きが違うだけで、頭には観念的な戦争、ゲームとしての戦略しかなく、外交がないという指摘は辛辣。2023/06/01

のらきち

1
audiobook。「戦争は良くない」「平和が一番」と言うだけは簡単だが、それを実現するには背景をよく理解し最もマシな手段を選ぶしかない。まして短絡的な方法を最善策のように叫んだり、独善的な枠組みを他国に押し付けるのはかえって危ないこともある。2024/02/01

cricketsmoker

1
必ずしも本文でタイトルの問いに直接的に答えているわけではないのだが、著者が編集者とのやり取りで話していること、つまりタイトルの質問に答えるために様々な状況を検討することは、誰もが思考実験してみるべきだろう。また、軍事力の有無だけでなく、戦争をした方が選択肢として妥当になってしまうような状況を作り出さないというのは大事な考え方。そしてその状況というのは戦争当事者同志だけでなく様々な要因が関係するので単純なものではない2023/10/12

海冨長秀

0
信用のおける国際政治学者。「正しい戦争」は本当にあるのか?うちの視点とそとの視点で考える。軍備増強論が盛り上がっている。自分が意見が正しいと簡単に思ってしまう人にこそ読んでもらいたい。2022/06/30

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