ちくま新書<br> 裏横浜 ──グレーな世界とその痕跡

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ちくま新書
裏横浜 ──グレーな世界とその痕跡

  • 著者名:八木澤高明【著者】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2022/05発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480074805

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内容説明

みなとみらい、赤レンガ倉庫、山下公園……。横浜からはオシャレで、洗練されていて、都会的なイメージが想起されるが、それはほんの一面にしか過ぎない。悪臭で誰が泊まるともしれない船の宿、最後の居場所のストリップ劇場、革命家の隠れ家など、その裏側には猥雑で混沌したものが隠されている。生まれ育った街の歴史を掘り起こし、実体験を織り交ぜながら、横浜の真の姿をさらけ出す。

目次

はじめに
第一章 横浜スタジアムの足元
ダフ屋がいた風景
大洋の二軍選手がいた店
捕鯨の歴史
「クジラ一頭、余分に獲れれば野球選手の給料は賄える」
ホームを横浜へ移転する
横浜スタジアムのルーツはクリケット場
横浜公園に残る遊廓の跡
岩亀楼に行き交う人々
戦争による都市変化
ベーブ・ルースに対する苦い記憶
第二章 海上の楼閣──山下公園、みなとみらい
昭和の臭いがする港
洗浄された赤レンガ
埋め立てられた海上の楼閣
倉庫に保管された生糸の産地へ
廃娼令と女性労働者の確保
名もなき娘たちが通った道
生糸がもたらすもの
外国からの要求で作られた屠畜場
肉屋をはじめた理由
伊勢商人が横浜へ
第三章 消えた大陸の空気──中華街
はじまりは外国人居留地
大陸の匂いと生活感にあふれる街
インドと横浜のつながり
淫靡な空気が残るバンコクの中華街
革命家の隠れ家
売春と麻薬の巣窟
地球の裏側の華僑
貨物船で密航してきた中国人に出会う
第四章 日の当たらない人の居場所──黄金町
得体の知れない匂いを発している町
黄金町に部屋を借りる
劇場がしがみつく杭
「劇場に命を救ってもらったようなもの」
劇場主の破天荒な来歴
突如劇場の幕は閉じた
第五章 デラシネのゆりかご──寿町
日本三大ドヤ街のひとつ
タイ人娼婦の住むマンション
タイ国王の写真が飾られている部屋
横浜に流れてくる麻薬の源流
埋め立てが完成し問屋街へ
足を踏み入れられない船の宿
ある手配師の話
元連合赤軍兵士と寿町を歩く
今日のフロント企業の走り
第六章 世界との架け橋──鶴見
一九八〇年代のアントニオ猪木
鶴見にある猪木の生家
丘の上の屋敷からブラジルへ
出稼ぎに来たものが集う街
奴隷が生んだ食べ物
日系ブラジル人の男娼との出会い
京浜工業地帯が生み出したもの
劣悪な環境の移民宿
懐かしい大桟橋
海路は閉ざされる
第七章 高低が織りなす風景──山手、元町、その周縁
偶然迷い込んだ米軍住宅
日本へ戻ったことの安堵感と屈辱感
崖の上と崖の下の圧倒的な格差
屋根なし市場で生まれた昭和の名歌手
地獄から抜け出したその先には
開港以前で横浜に暮らしていた人々
外国人を魅了したチャブ屋
谷崎潤一郎が足しげく通った店
外国人が眠る場所
歪められる悲しい歴史
第八章 夜の街に吸い寄せられる──伊勢佐木町
グローブの記憶
遊郭・芝居小屋・映画館
時代は変わっても色街はある
曙町で働いていた風俗嬢の思い出
友達に誘われて働くことに
奨学金返済のために風俗で働く
耳の聞こえない娼婦
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

65
かなり残念な本。著者(「裏社会」的なものを取材してきた横浜出身のライター)の過去の取材メモから横浜に関するものを取り出し、自身の経験とつなぎ合わせて語っただけという感じ。この著作のために新たに取材したという感じが全くしない。確かにおもしろい話しもあるにはあるが、全体に突っ込み不足で物足りない。例えばハマスタのある横浜公園の部分で、戦後米軍に接収、ルー・ゲーリック球場になった話の中で、「戦争と平和の繰り返しの上に今日がある」と書くが、その球場が返還された後の名前が「平和球場」であったことは書かれていない。2022/09/15

おいしゃん

34
横浜で20年以上暮らし、よく「横浜はオシャレで良いね」と言われたが、闇の部分の横浜をしっかり捉えた作品。そして今ではハレの場となった横浜スタジアムの、過去の闇も興味深い。2022/11/06

おかむら

33
あのシャレオツな観光地横浜の裏の顔! と裏方面にはなぜか惹かれてしまうタチなのでこれは楽しそうかも。でもあれぇ、なんか思ってたんと違かった…。もっとディープでダークなルポルタージュを期待してたのに、なんだか浅めの蘊蓄エッセイだったよ。残念。そして地図もカンタンすぎて不親切。2022/10/23

アリーマ

26
横浜というのは、何故か無駄にオシャレなイメージを持たれがちだが、実は非常に保守的で泥臭い街だ。その辺をまるで知らない人には面白いのかも。横浜在住20年余のワタシには、特別目新しい話はなかった。街の成り立ちや背景についての情報は多少入るが通り一遍。あとは安っぽい作者の感傷が縷々綴られる。私の感覚では、売春窟にベタベタしたノスタルジーを抱くタイプの男性視点は単に不快でしかないし、嬉々としてスラムを覗き回るバックパッカー感覚は偏りがすぎる。ルポルタージュというよりは中途半端な自分史を読まされた感じに萎えた。★★2022/09/10

二人娘の父

14
裏というよりは、アナザーヨコハマ。寿町も黄金町も、そこまで裏じゃない。あくまでももうひとつの横浜。それも横浜。あれも横浜。本書でいちばん驚いたのは、アントニオ猪木が鶴見出身ということ。プロレス関心なしな私には新鮮な事実だ。様々な人生が交差する港町・横浜という著者のテーマは理解するが、ちょっと薄いでしょうか。もっと濃いのが好きです。2022/09/08

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