内容説明
名作SF論から作家論、書評、エッセイ、自作を語る、対談、インタビュー、帯推薦文まで、日本SF大賞二冠作家・飛浩隆の貴重な非小説作品を網羅。単行本未収録作品も多数収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
75
本格的かつ特殊な作品を、絞りに絞って発表している「全身SF作家」飛浩隆の特異な評論・随筆集。星新一の評伝にふれた箇所で、星新一（をはじめとしたSF作家第一世代たち）について「SFを生きることで、生きることができた」とある。その飛自身も当然、「SFを生きてきた」ことは、飛自身の選択で本書に収録された追悼文が、栗本薫、伊藤計劃、石飛卓美の３名を対象にしていることから、理解することができる。この3名は、方法は違うがそれぞれ、「人生をかけてSFを生きた」とよべる作家たちだから。2023/06/03
ぐうぐう
43
小説家のエッセイ本を読む目的は、小説家自身の人となりを知りたいことが大きいとは思うが、小説家の小説をもっと理解したいとの目的もある。飛浩隆の随筆集『ＳＦにさよならをいう方法』を読もうとした動機は後者で、そのタイトルが暗示しているように飛の小説を理解する一助になればと手に取ったのだった。ところが、読み終わって本を閉じた際の印象は後者よりも前者だったのが意外。つまり、飛浩隆という小説家への親しみが増したのだ。それは、飛の小説に覚える深淵さ、もっと正直に告白すれば難解さを覆す親しみが、（つづく）2022/03/09
まこみや
38
飛浩隆氏となれば、作品の評価以前にまず作家としての姿勢に感嘆する。地方の（時には離島で）公務員として働きながら書き続け、今やSF界の最前線に立たれている。無論同好の士の存在や家族の理解もあったには違いないだろう。しかし深更にまで及ぶこともある役人生活の傍ら、ストイックな生活を堅持しながら、締切もなく目標も定かではない五里霧中のなか執筆を続けるのは、尋常な意志と持続力ではなしえない。しかも名を成した後も定年まで二足草鞋を履き通した。結果、日本SF界に大きな足跡を残している。畏敬するしかない存在だ。2022/03/07
ふりや
16
単行本『ポリフォニック・イリュージョン』の中から作品論、エッセイなどの非フィクション作を独立して文庫化した作品。非常に興味深い内容で楽しく読めました。飛さんの小説を読んだことのある人なら手に取って損は無いと思います。特に面白かったのは書評、文学賞の選評、自作の解題、帯文に関するエッセイなど。飛さんの小説は重厚でスケールが大きく、読むのに体力を使いますが、こちらの作品は肩肘張らずに気楽に読めます。と言っても、文章の鋭さはさすが飛浩隆、と唸らされるものがあります。水戸部功さんによる装幀もとてもカッコいいです。2021/12/08
おかだん
10
単行本で出た時に読んでいたので再読になるのかな。こうやってまとめられて見ると伊藤計画氏の死が飛氏にかなりのショックを与えていたんだなと思う。もっとも油の乗り切った時期の闘病と死、同時期に活躍している作家達にとっては等しくショックだったに違いないが。 仕事しながら書く極意、は簡単に書いているが真似する事は常人にはキツいだろう。書く事に情熱があり、バランス感覚にも優れた氏だから出来、なおかつ作品の素晴らしさを知る関係者が寡作を認めるからこその偉業と言える。2022/01/17
