内容説明
人間そっくりのロボット「カゲロボ」が学校や会社、家庭に入り込み、いじめや虐待を監視している――そんな都市伝説に沸く教室で、カゲロボと噂される女子がいた。彼女に話しかけた冬は、ある秘密を打ち明けられ……(「はだ」)。何者でもない自分の人生を、誰かが見守ってくれているのだとしたら。共に怒ってくれるとしたら。押し潰されそうな心に、刺さって抜けない感動が寄り添う、連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
85
★★★★☆23056【カゲロボ (木皿 泉さん)k】カゲロボってなに?ロボット?この小説はSF?などと頭がハテナ状態で読書開始。ちょっぴり未来要素入ってるけどテーマの基本は人ですね。そんなお話がたくさん詰まった短編集でした。短いだけに奥行きには限界があるでしょうけど、それぞれが微妙な繋がりでラップしてるところもあって思いのほか楽しめました。9作品どれも良かったんですけど個人的には『こえ』がいちばん好みだったかな。箱型の機械がジュース飲んだり、おしっこしたりっていう発想がなかなかいいですねぇ。プチオススメ!2023/08/30
エドワード
48
AIが発達した近未来の日本。人間そっくりのロボット・カゲロボが社会の隅々で人々を監視している。不登校の生徒の代わりを務める箱。終末医療病院で人生最後の夢を見せるVRメガネ。ペット用ロボット・アンネコ。要らないものを開発するなよ~誰がそんなもので喜ぶか。最も心冷えるのが、離婚する夫婦が子供をどちらが引き取るかでもめて、もう一人アンドロイドを造る話だ。しかしロボットにも心はあるのだ。監視するカゲロボ、回収されるアンドロイドの心に触れた時、不思議と暖かい気持ちになる。手塚治虫、石ノ森章太郎に通じる哀愁を感じた。2022/08/27
future4227
47
今年の渋谷教育学園渋谷中の入試で出題。だからといって全編読むと、とても子どもには勧められない本。殺人、動物虐待、痴漢など際どい話が連続する。本物と見分けがつかないロボットが極秘裏に世の中に溶け込んで日常生活を送っているという世界観のSF短編集なんだけど、ロボットは人間とは限らず、動物であったり、箱であったり。人間のエゴを満たすツールのようなものとして存在している。詳しい背景説明もないまま無理矢理その世界観に引きずり込まれる不条理。登場人物たちも世の中の不条理に悶々としている。現実も不条理に満ち溢れている。2024/06/12
カブ
47
人間そっくりなロボット「カゲロボ」が監視してますよなんて、ちょっとSFチックな連作短編です。不思議な感じがしてなかなか物語に入り込めなかった。2022/06/09
niisun
44
木皿泉さんは、初小説『昨夜のカレー、明日のパン』を読んで以来ですが、やはり、独特の、雰囲気、可笑しみを醸していますね。この作品は、人間そっくりのロボット“カゲロホ”が、学校や家族の中に紛れ込んで、常に何かを観察しているという話。SF忌憚ですが、星新一や筒井康隆のように世の中を批判的な眼差しで見つめる感じはなく、もっと人に寄り添っていて、優しい視座から描かれているように思います。人生の良い時も悪い時もどこかで誰かがみている。日本的に言えば“お天道様がみている”という感じでしょうか。面白く読ませて頂きました。2022/10/28