内容説明
猛将、賢将、凡将、愚将――。大戦をリードした参戦各国の指揮官たちにつきまとう「評価」は、本当に正しいものなのか。戦後永らく日本を支配してきた俗説を排し、日進月歩の最新研究に基づいて明かされる、将軍たちの知られざる言動と意外な横顔。戦後七十七年、ついに登場した『独ソ戦』の著者による軍人評伝の決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばたやん@かみがた
102
《将官たちの闘いから覗く彼我の戦略的優劣》南雲、ジューコフといった有名な人物も取り上げられてますが、そちらは名将の意外な一面チラリと見せる趣。寧ろ、水上源蔵やハンス・ラングスドルフの様に無名かつ祖国に裏切られた形で死に赴かざるを得なかった将の姿が印象に残ります。そこには、敵に比べてそもそも戦略的に劣勢だった故に無駄に将兵に犠牲を強いざるを得なかった枢軸国側の事情が露呈している訳です。作戦次元では勇敢で有能だったパットンが「大局見る能力なし」とさして評価されず、(1/2)2022/11/05
skunk_c
67
主に雑誌掲載のエッセイ的な評伝を集めたもので読みやすい。有名人(デーニッツとかパットンとか)も取り上げられているが、その人物のある意味知られざる一面を書き起こしているので興味深かった。また、まず話題に上ることのない人物(水上源蔵、プリンス・オブ・ウェールズ艦長トム・フィリップス、ドイツ軍のゲオルグ・トーマス、ドイツ軍医ローデンヴァルト、イギリス軍ウィリアム・スリムなど)が取り上げられており、その点でも貴重な書と思う。終章の将帥論にある、アメリカと日本の、将軍に対する評価の違いは第2次大戦の本質につながる。2022/06/03
yamatoshiuruhashi
55
12人の第二次大戦中の世界の将帥を選び「名将だったのか、名将としてのイメージはどこにあるのか」をわかりやすく追求していく。ド・ゴールの記述あたりは無難だが、インパール作戦について日本側の失策ばかりでなく、英国のウィリアム・スリム元帥の慧眼に注目する点はこの著者ならではの切り口であり、しかも日本の失策と彼の着眼点があの悲惨な敗退を決めたのだと思うと郷土の先人の苦労に新たな感慨が浮かぶ。終章にて戦術と戦略の間に「作戦術」について論及するが組織論として非常に参考になる。2022/06/21
サケ太
24
かなり面白い。元々各国の指揮官について知っているわけではないものの、定説で語られてきた指揮官たちの側面は新鮮。この中で、非常に驚いたのは、別の書籍でさんざん見てきた「船と運命をともにする艦長」という美徳がイギリス人の船長(トーマス・フィリップス)、しかもそれが虚像であったのは驚いた。著者が「呪い」と形容していたが、まさしくと言った感じ。名前と空母の名前だけは知っている、山口多聞の評価も興味深かった。イギリスやアメリカ、ドイツと日本で必要とされていた指揮官の資質や、戦略・作戦・戦術の違いが面白かった2022/05/31
ピオリーヌ
17
第二次世界大戦に参戦した諸国の指揮官たちに、正面からではなく、側面からライトを当てて紹介していく内容。ほぼ知らない人物ばかりだったが、ド・ゴールを「挫折した起稿師団長」と紹介するなど大変楽しく読めた。連合国と枢軸国の比較についての文章も分かり易い。「ドイツ軍の指揮官は、作戦次元で連勝を続け、戦略次元の劣勢を挽回する以外になすすべは無かったのである。当然のことながら、かかるアクロバットは、何度となく美技を示したとしても、いつかは失敗し、床に叩き付けられる運命にある。」2024/01/11