内容説明
若さや親しみやすさで人気を得るアイドル、ジュニアから養成されるジャニーズ、音楽学校入試が毎年報じられる宝塚歌劇団……成長途上ゆえのアマチュア性が愛好される芸能様式は、いかに成立したのか。近代家族とメディアが生んだ「お茶の間の人気者」から日本文化の核心を浮き彫りにする、気鋭の社会学者による画期的論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
116
厳しいトレーニングを経て活躍するアメリカや韓国の歌手に比べ、日本の芸能界では半素人の未熟なうちにデビューさせ成長のプロセスを楽しむやり方が普通だ。なぜこんな特異な嗜好が定着したのか、余すところなく疑問を解き明かしていく。童謡歌手や宝塚などを通じて戦前から「幼さ」が都市住民の人気を得て、戦後はテレビの普及と茶の間の中間層の拡大が親しみやすいアマチュア性を求めたのだ。その求めに応じたのがジャニーズやGSであり、スター誕生を経てAKBへとつながる。芸能面での特異な好みを通じて考えるユニークな日本論となっている。2022/08/31
fwhd8325
54
童謡歌手からスター誕生まで、日本アイドル史といえる内容だと思います。サブタイトルにある宝塚やジャニーズには、あまり縁がありませんが、渡辺プロダクションやグループサウンズ(私にとってはジュリー一本なのですが)は、私にとってまさしくザッツエンタテインメントなのです。それは未熟さとは対極であるように思うのですが、著者が書きたかったテーマ、アイドル=未熟さを立証させるためには仕方ないのでしょう。描かれている大半をオンタイムで経験している私には、あらためて面白い、素敵な時代だったなと思うのです。2022/06/28
かさお
39
たしかにっ✨発展途上というかダイヤの原石、青田買い、子役の時から注目してた、とか「化ける」事を楽しんでる私が居る、だいぶ前、歌わない踊らない演技しない叶姉妹が何故人気なのか海外では理解されなかったという。ジャニーズや宝塚も英訳が難しいという。この本では、戦後の日本の近代家族モデル(農村から流れ都会でサラリーマン、主婦、茶の間の作成、家庭音楽で夫を癒やす、子供にお金をかけて育てる)が政策として根つけられた過程から考察されている。なかなか興味深かった。オーディション番組とか練習風景とか観るの好きだもん2023/05/16
遊々亭おさる
18
女性アイドルグループの握手会にはわざわざ安くはないお金を払って10代の子供に説教をしに来るファンがいるという。風俗嬢に説教する賢者タイムのスケベオヤジのような間の抜けた光景は、完成された芸でファンを魅了するプロの周りではあまり見られない光景ではなかろうか。エンタメで韓国の後塵を拝する原因となった日本独自の未熟さを愛する芸能文化を戦後の童謡歌手に始まり、宝塚の黎明期を経て、ジャニーズなどのテレビの申し子たちの活躍の歴史と共に考察する一冊。アマチュアがプロを凌駕する。YouTube人気は約束された道だったか。2024/06/03
しゅん
17
宝塚、ジャニーズと副題にあるが、実際にはその二つに対象を限定せず、童謡の誕生、渡辺プロの拡大、グループサウンズの流行についても語られる。「スター誕生」の応募者が期せずにして低年齢層と女性に集中したという話。女性の集中は、結婚以外の物語が一般女性に与えられていなかったからだろう。成長を見たい欲求と未熟さを保存したい欲求が同時並行する流れがあるのはわかった。そこから、日本国民の問題を確定するには、「未熟さ」のカルチャーをジェンダー論に接続する作業が必要に思う。2024/03/01