内容説明
吉野作造賞受賞作
「亡国の再生」に挑んだ5人の首相たち
敗戦2日後に誕生した東久邇内閣を皮切りとして、7年後の占領統治の終焉までに、幣原、吉田、片山、芦田、再び吉田と5人の首相、6代の内閣が生まれた。眼前には、非軍事化、民主化、食糧難、新憲法制定等、難問が山積する。占領という未曾有の難局、苛烈をきわめるGHQの指令のもとで、日本再生の重責を担った歴代首相たちの事績と人間像に迫る。
本書は占領下で重い荷を負った「首相たちの新日本」を再現せんとする試みである。戦後日本の再生のドラマを、通史的に描くのではなく、5人・6代の首相たち(吉田のみ再度、政権についた)が、何を想い、何を資源として、この地に堕ちた国を支え上げようとしたか。そして何に成功し、何に行き詰まったか。「人とその時代」を6つ重ね合わせるスタイルで描こうとの試みである。――<本書「まえがき」より>
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目次
第1章 占領統治の受容――東久邇宮・皇族内閣
第2章 2人の君主――マッカーサーと天皇
第3章 平和国家への転生――「幣原外交」の成就
第4章 「よき敗者」――第一次吉田内閣
第5章 民主化改革の担い手――片山哲の革保連立政権
第6章 「中道」の火を消すな――芦田均の保革連立政権
第7章 保守政治による再生――吉田茂の季節
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
13
1945-51の短期間の動きを、首相5人を軸に詳述。教科書などでも深く描かれることが少ない、吉田以外の4人についても一章ずつを割いており、特に敗戦直後の国政を担当した東久邇と幣原を高く評価している。マッカーサーと天皇という占領期の二人の君主についても性格面にまで深掘りして描かれているが、一方で民衆への言及は少ない。次は占領期の民衆史について学んでいきたい。2020/11/23
バルジ
2
戦後の5人の首相のパーソナリティに焦点を当てた良書。 幣原と吉田が高く評価されるが、総理大臣としての東久邇・片山・芦田への評価は辛い。(人間的な面での評価は悪くないのだが) 「改革には遅すぎ講和には早すぎた」故に政治目標を見失ってしまった芦田均の悲運さと、何故か状況が味方し自身の政治権力を強化出来た吉田茂があまりに対照的で、歴史のイタズラとはこういうものなかと考えてしまった。2017/05/17
Tomy
1
「歴史は状況と個人が織りなす錦絵である。」(p5)という筆者の考えが見事に表現されている。「歴史における人間の尊厳」を占領期における5人の首相に見いだそうと、それぞれの首相が何を考えどう生きてきたのかが描かれている。所々小説を読んでいるような感覚にも陥った。五百旗頭先生は、改めて偉大な歴史家だなと再認識させられました。本書の趣旨とは直接関係ないが、東久邇はフランス語、幣原、吉田は英語、芦田は英語、フランス語の達人(芦田は博士号取得首相)であったということでいつの時代も語学は大事。俺もドイツ語頑張ろう。2015/02/14
熱東風(あちこち)
1
今迄殆ど個人的に興味がなかった、終戦直後の内閣を分かりやすく説いてくれる。とかくこの時期の内閣は現行憲法を定めた幣原内閣以外は軽く流されがちな傾向にあるようだが、それぞれそれなりの役割を持っていたことが、この本を読むと理解できる。特に東久邇内閣の、降伏文書調印までの役割は決して軽視していい類のものではないということを知ったのは大きな収穫だった。/それらに加え、内閣そのものだけでなく、各首相の人となりをも簡単に紹介してくれるのが親切だ。これによってまた興味の対象が広がってゆく。2014/04/07
ふじすけ
0
終戦直後の5人の首相をメインにして、日本の占領期を描いた本。個人的には幣原首相が好きかなあ。2013/05/25