内容説明
阿波国の戦国武将・三好元長は、将軍家の血筋に連なる足利善維、三好家の主君筋に当たる細川六郎とともに、戦のない世を作ろうと誓いを立てた。元長は類い稀なる才を活かし、時の政権に代わる堺公方府の樹立に貢献した。畿内支配体制を確立すべく活躍をみせたが、その後、主君・六郎との対立の末に壮絶な人生を歩むことになる――。大いなる野望の先に、男がみた夢とは!?第十九回中山義秀文学賞受賞作家が、悲運の武将・三好元長を描いた渾身の戦国史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
331
『蝮の孫』に次いで、こちらも楽しく読み終えた。語り口や分量のコンパクトさと、史実にフィクションを絡める匙加減がとても良く、だれずに一気読み出来る。描かれる人物像も、どこか現代っぽさがあり、感情移入しやすい。信長台頭以前の、あまり大きく語られることのない、どちらかというと地味な時代の話で、しかも権威が地に堕ちた足利家周辺を、これだけ面白く展開出来たことがまず凄い。野心の芽生えや、かけ違ってゆく関係性などが、短い文章で描写されており、謀略主体の、物語全体の暗いトーンを効果的に引き上げる。すぐに他作品も読む。2020/06/24
巨峰
64
戦国前期の畿内が舞台。三好元長・細川六郎晴元・足利義維。登場人物はマイナーすぎるけど、結構面白い。彼らの行状を考えるとそんなに理想に燃えていたとは思えないけどw主人公の三好元長が能力が高い人であることはわかった。よく知らない時代なのに分かりやすく読ませたというべきか、よく知らないから楽しめたというべきか。久一郎の正体は結構早い段階で予測がつきました。それにしてもあらゆるところ下剋上なんだよね。主は部下を、部下は主人を死に追いやる。情けをかけると負け。結構非情な時代です。2016/02/15
ポチ
53
三好長慶の父親の話。権謀術数に長けた欲の塊の人達の中にあって、非情になれなかった元長は余りに優しすぎたのかも。読み応えのある一冊です。松永久秀…そうだったのかぁ(^^)2016/09/16
けやき
51
面白かったです。日本史に詳しい人でもあまり知らないと思われる三好元長が主人公。志を持って生きるのも難しいのかなぁ~。人は変わっていくものだけど。でも変わらぬものもあると信じたい。そんなことを考えさせられた作品でした。2016/10/20
Wan-Nyans
41
★4.3面白かった。作者は別だが、「じんかん」を読んで興味を持った三好元長。「じんかん」では松永久秀の主人として、武士のない世の中をつくろうとする元長だったが、本作でも、民のために戦のない世の中を夢想する。その元長を、主筋ながら兄と慕って育った細川六郎(晴元)と足利義賢。固い絆で結ばれた三人の関係はやがて…。最後まで相手を信じ、三人で誓った理想を追い続ける元長。その一本気な”想い”はやがて次世代に引き継がれていく。「じんかん」に感動した人にはこちらもおすすめ。勝るとも劣らない秀作。2020/10/17