内容説明
1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。現代台湾を代表する作家の連作短篇。単行本未収録短篇を併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
97
ネットで見つけた写真で、カバー絵に描かれたこの巨大商業施設が実在したことを確認。ここなら魔術師もいただろう。かつて台北にあった中華商場。店舗と住居が一体となった奇跡のような空間で少年少女時代を過ごした人々が語る遠い記憶は、失われた故郷への苦みを帯びた憧憬に溢れ、どこか夢のようだけど、大人になった彼らの内に確かに凝っている。濃密なコミュニティでの充足感と息苦しさ。日常としてやり過ごされる多くの死と別れ。私が育った町も中華商場と同様、時代の波に飲まれて消えた。思い出してしまった。帰るべき故郷はもうないことを。2024/11/30
はっせー
83
不思議な世界観を味わいたい人やアジア文学に興味がある人におすすめの本になっている!今年何故かハマっているアジア文学。その中でも面白さと没入感が心地よがかった!台湾の市場に住んでいた人の過去の回想録。どれもが短編になっているため独立はしている。でも共通点がある。それは歩道橋にいた魔術師である。普段はマジック道具を売ったりしているが、子どもたちに稀に見せるマジックはほぼ魔術の類である。文学とは一種の魔術であり私達読者がその魔術にかけられてどこか遠くの世界に行ける。そんな感覚を味わえる作品になっている!2023/03/29
カフカ
70
1980年前後の台北・中華商場に住む子供たちを主人公に描いた、幻想的でノスタルジックな連作短篇集。ほぼ全ての短篇に“歩道橋の魔術師”なる、歩道橋の上で商売をする魔術師が出てくる。ただの手品師のような風貌なのだが、時折本物の魔術のようなものを用いる謎に包まれた人物。彼を物語に織り交ぜて、少年少女たちに不思議な体験が起こる。そこには、魔術によって生き返る命も、生き返らない命もある。幻想の中にあっても、生きるということは残酷なことだ。薄靄に包まれたような哀愁を心に残す物語だった。2023/04/14
Sam
56
かつて台北に実在した「中華商場」。3階建ての建物8棟が1キロに渡って連なるという巨大な商場(兼住居)であったらしい(表紙カバーを見るとよく分かる)。本作はかつてそこで子ども時代を過ごした人々が織りなす連作短編集。ノスタルジックな語り口ではあるが、それぞれが直面する死や喪失感が巧みに描かれ物語に深みを与えている。そして毎話登場する「歩道橋の魔術師」は、エピグラフのガルシア・マルケスのように作品に「マジック・リアリズム」の魔法をかけている!(ちょっと大袈裟だけど)2021/11/21
アオヤマ君
49
昔読んだ気がするような味わいの初めて読む物語。デジャヴな感じが心地よい。台湾の昔あった「商場」と「歩道橋」という「場」がそれを生み出している。その「商場」を舞台にしたそれぞれ異なる主人公たちを通じての連作短編。商場や歩道橋もなかったけれど、あの頃ボクたちもその「場」にいた。たぶんボクらの魔術師もいたんだと思う。感傷と郷愁。読み終えた時、懐かしい友人に会ったような気になりました。魔法にかかったのかな。2024/06/14




