内容説明
日本人は誰もが「攘夷派」だった!
「尊皇攘夷vs.公武合体」という幕末史の定説を覆し、日本人の対外認識の原型を抉り出す、画期の書。
[本書の内容]
序 章 幕末のイメージと攘夷
第一章 東アジア的視点から見た江戸時代
第二章 幕末外交と大国ロシア
第三章 坂本龍馬の対外認識
第四章 攘夷実行と西国問題
第五章 攘夷の実相・朝陽丸事件
終 章 攘夷の転換と東アジアの侵略
目次
序 章 幕末のイメージと攘夷
第一章 東アジア的視点から見た江戸時代
第二章 幕末外交と大国ロシア
第三章 坂本龍馬の対外認識
第四章 攘夷実行と西国問題
第五章 攘夷の実相・朝陽丸事件
終 章 攘夷の転換と東アジアの侵略
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
66
講談社現代新書版は既読で、読み出してからそれに気付くお粗末さ。ただ、本書では「亀山社中」から「海援隊」という坂本龍馬の流のうち、「亀山社中は全く別物」と明言しているそうだ(文庫版あとがきより)。朝陽丸事件を8月18日政変の大きなきっかけのひとつと位置づける議論は、もっと深められて良いと思う。著者は幕末の薩摩藩がメインフィールドだが、若い頃に幕末長州の研究をしていたとのこと。当時の長州が一枚岩でなかったことなど、幕末史に踏み込むときに本書は読まれるべきと思う。現代新書から改訂されているのでこちらがお薦め。2025/10/12
MUNEKAZ
17
「攘夷」はみんなが納得していた目的であって、それをどう行うかという方法論で、薩長も幕府も朝廷もいがみあっていたのだよ、「公武合体」や「尊王攘夷」というのは全くのまやかしなんだよと説く一冊。目的が同じなのだからもっとうまくまとまれないのと後世の人間が思うのは、その後の歴史を知っているからで、当時の人々からしたら先の見えない不安から、強硬な行動で対立するのも仕方のないことだろう。本書でもその悲劇の例として「朝陽丸事件」を深掘りしている。結局のところ、攘夷実現のために幕府も藩も朝廷もぶっ壊されてしまうのだ。 2024/12/27
さとうしん
11
従来の開国派を即時攘夷に対する「未来攘夷」と読み替え、幕末の政治史を、攘夷実行の時期をめぐる抗争と読み替える。開国派のめざす「華夷帝国」の夜郎自大な理念を見ると、大日本帝国の破滅は成立前にして予定されていたと暗然たる気持ちになるが…2022/05/08
金監禾重
8
「幕末はみんな尊王攘夷だった」は知っていたが、攘夷論がここまで大東亜戦争に直結する思想だったとは。日露戦争の結果に浮ついただけかと思っていたが、幼稚な井の中の蛙が認識を改める機会に恵まれないまま破滅を迎えてしまったのだ。「龍馬も攘夷」は論拠が周辺人物がそうだから龍馬もそうだ、なので、そのままは受け入れがたい。第五章の「朝陽丸事件」を読むと胸が痛む。攘夷期限など約束しなければ、第一次長州征伐が徹底していたら、小倉藩が細川時代の規模のままなら、など意味もないifが浮かぶ。2025/02/04
kawasaki
7
「中二病」という言葉を連想してしまう。幕末期に本格的に直面することになった「国際関係」での自己の位置づけ方が、東アジア伝統の「華夷帝国」モデルか同時代の西欧発「帝国主義」モデルしかないという中で、植民地化が嫌なら世界の中心だという極端な認識・表現があふれ出る。個人の中二病は自我の確立のために必要なはしかのようなもので、やがて世間と折り合いをつけて穏当なところに落ち着くものと言われるが…… 朝陽丸事件や小倉藩と長州藩の対立など、幕末期日本の危機的分裂状態――「政令二途」をめぐる検討などが興味深い。2022/06/25




