内容説明
将来世代のための社会を作ろう、しかしそのためにはどうすればよいのか。こうした課題に対して「仮想将来世代」の導入による対話を模索してきたフューチャー・デザイン。そして未来に関して豊富な思索と議論を積み重ねてきた哲学。両者の出会いから、未来を予測し、未来とつながり、未来と対話するために必要なことを問い直す。
目次
はしがき
はじめに[西條辰義・宮田晃碩・松葉 類]
1 フューチャー・デザインとは何か
2 将来世代とは何か
3 フューチャー・デザインの特徴
4 本書が取り組む課題は何か――各章の内容
第一部 〈未来を予測する〉
第1章 フューチャー・デザイン×哲学[西條辰義]
1 我々は何をしてきたのか
2 なぜ将来失敗は起こったのか
3 FDとは?
4 FD実験
5 市民の皆さんとともに
6 これから
第2章 「自分自身のため」とは何か?――マルティン・ハイデガーの示唆と世代間対話の可能性[宮田晃碩]
1 はじめに
2 自分自身のためとは何か――問題の導入
3 私たちの本質は「実存」である
4 私たちは世界に埋め込まれて、自分のために存在している
5 「非本来性」と「本来性」――私たちは自己決定の可能性をもつ
6 「歴史性」という条件――私たちは具体的な物や場所から可能性を受け取る
7 物や場所への気づかい――将来世代との共生へ向けて
8 おわりに
第3章 円環と直線の交点――わたしたちは現在をどう引き受けるのか[佐藤麻貴]
1 はじめに
2 不確実性に対峙する「態度」という問題――宗教か、科学か? 過去か、未来か?
3 直線的時間概念の呪縛――過去から現在へ、現在から未来へ
4 時間と空間――不確実性のひろがり
5 おわりに
第4章 仮想将来世代と「無知」――群盲、部屋のなかの象を評す[太田和彦]
1 序 論
2 未来についての無知の扱い方――先行研究(1)
3 「未知の既知」を拡大させる抑圧と急き立て――先行研究(2)
4 「故意の盲目」の受け入れ方――先行研究(3)
5 未知の既知を言表する方法としてのFD
6 未知の既知を言表する方法としてFDを用いる場合の注意点
第5章 労働と余暇の未来――ケインズの未来社会論を手掛かりに[百木 漠]
1 AI+BIによる革命?
2 AIの発達と雇用の縮小
3 ケインズの予言
4 労働からの解放はユートピアかディストピアか
5 AI+BIかWSか?
6 貨幣愛の克服
7 結 語
第二部 〈未来とつながる〉
第6章 将来世代への責任――ハンス・ヨナスの思想[戸谷洋志]
1 はじめに
2 問題設定
3 テクノロジーの本性をめぐる分析
4 将来におけるテクノロジーの価値
5 責任という原理
6 将来の予見
7 恐怖に基づく発見術
8 将来の可能性への責任
9 むすびにかえて
第7章 対話篇 住む時代の異なる人たちの間の関係とはどのようなものか、どうすれば上手くやっていけるか[廣光俊昭]
第一幕 先行世代は後続世代に責務を負っている
第二幕 異なる各世代は共通の利害を持っている
第三幕 では、どうしたらよかったのか
第8章 将来世代への同感――ヒューム、スミス、その先へ[宇佐美誠・服部久美恵]
1 同感の道徳哲学
2 道徳的理性主義 対 道徳感覚説
3 ヒュームの共感論
4 スミスの同感論
5 同感をめぐる理性と感情
第三部 〈未来と対話する〉
第9章 将来世代との対話の倫理――レヴィナス哲学を手掛かりに[松葉 類]
1 はじめに――将来世代との対話の困難
2 レヴィナスの他者論
ほか
感想・レビュー
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