内容説明
竪穴建物や高床倉庫、寺院など、各地の遺跡の復元建物により、私たちは当時の姿を具体的に思い描くことができる。だが、その復元がどのように行われているかを知る人は少ない。発掘遺構や遺物、現存する古代建築、絵画資料など、あらゆるピースを組み合わせることで完成する復元の世界とはいかなるものか。その裏側を垣間見て、知られざる魅力に迫る。
目次
復元の世界へのいざない―プロローグ/古建築を知る(古建築の基本構造/建築各部の構造/さまざまな建築形式と平面)/建物の痕跡を見る(建物のさまざまな基礎構造/建物に付随する発掘遺構/出土遺物)/発掘遺構と建物をつなぐ(復元のフロー/復元をサポートする資料/発掘遺構から復元建物へ)/復元の裏側をのぞく(宮殿を復元する―平城宮第一次大極殿・朱雀門/寺院を復元する―四天王寺/集落を復元する―登呂遺跡)/復元建物の楽しみ方とこれから―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろし
66
謎の多い1000年以上前の古代の建物をどう復元するか、その考え方をわかりやすくまとめたもの。現物が残っていない建物を、柱穴などの発掘調査から規模や大まかな構造を推定し、文字資料、絵画資料や類例から細部の具体的な復元を考え出していく。理詰めで案を絞っていくが、それでも一つに決めるのは難しいところがあるようだ。発掘などで新たな資料が見つかるとそれまでの常識が否定されることもありうる世界。知らないものを調べていくと思いがけないことがわかって視界が開け、パズルのピースがはまっていく爽快感を想像しながら読んだ。2022/08/09
紫草
14
発掘された遺構からどのようにして建物を復元するか、についての本。著者は建築史の専門の先生。まず最初に、古建築の基本構造を詳しく教えてくれます。古代史の本で古建築の復元について読んでいても、建物の構造とか部分の名前とかよくわからないことが多かったので、それを詳しく教えてくれ、図もたくさん載っているのがありがたかった。後半は実際の遺構から何がわかり、わからない部分はどうやって復元したかのか、平城宮の大極殿や朱雀門などについて詳しく教えてくれます。平城宮跡、今度いく時は双眼鏡持って屋根とかもよく見て来よう。2023/12/16
紫羊
11
知人からの回覧本。神社仏閣が好きなので楽しめた。2018/12/01
六点
11
西大寺駅から奈良に向かう途中、広大な草原にぽつんと立つ平城宮跡の大極殿や朱雀門を目にする。奈良を訪れる観光客が必ず行く建物である。では、その建物がどのような学問的検討により建ったか?と、いう本である。まず発掘調査によって建物規模の考察から始まり、出土物や史料で性格を推定し…と考古学から建築学や消防法までの検討によってやっと復元されるのである。しかし、建った建造物がその後の研究により「妄想建築」になることもある恐ろしい世界である。遺跡等に復元建造物がない事に難癖つける輩もいるが無くても仕方ないと思わされた。2019/02/15
chang_ume
7
古建築の構造理解ベストブック。「復元」というゴールが明らかな分、建築構造の説明に整理整頓が効いています。かつてあった建築を現実に建てる過程明示が、「復元学」の柱ならばこその明瞭さといえるでしょうか。たとえば「桁」と「梁」の区別について、本書ほど鮮やかで端的な解説もそうはありません。古建築の解説でようやく良本に出会えた感触を得ました。ところどころ洒落の効いた文章も好ましい。2017/12/11
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