内容説明
江戸幕府を開いた父・家康と「生まれながらの将軍」である子・家光の間に挟まれ、あまり目立つことのなかった第二代将軍。武功がないことにコンプレックスを抱きながらも、政治においては家康の成果を継承し幕府の支配を磐石にした。年寄による合議制や大名統制、鎖国政策の方向づけなど、秀忠独自の政策や政治手腕を分析し、その人物像に迫る。
目次
はしがき/徳川家の跡取り(秀忠の誕生/秀吉と秀忠/秀吉の死)/関ヶ原合戦と秀忠(上杉景勝攻め/秀忠の関ヶ原遅参/家康の将軍宣下と千姫の豊臣家入輿)/駿府政権と将軍秀忠(秀忠、二代将軍となる/駿府政権と秀忠/家康・秀頼の対面と秀忠/大久保忠隣の改易)/大坂の陣(方広寺の鐘銘問題/大坂冬の陣/講和/大坂夏の陣)/元和一国一城令と公武の法度(元和一国一城令/武家諸法度の制定/禁中 公家中諸法度/家康の死)/将軍秀忠の政治(年寄制の整備と秀忠の動静/貿易地の限定とキリシタン禁令/秀忠の上洛と和子の入内/福島正則の改易)以下細目略/松平忠直をめぐる危機的状況/秀忠の大御所政治/秀忠の晩年/秀忠の家族/おわりに/略系図/略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
MUNEKAZ
14
2代将軍・秀忠の評伝。父・家康が権謀術策を使い、ときには政敵と手を結ぶのに対し、秀忠は駆け引きよりも法に則った厳格な対処を好み、大坂の陣の処理のように父よりも冷酷な対応になるのは面白い。短気な性格も含め、関ヶ原の失敗によるトラウマと「ナメられたら終わり」という2代目ならではの切迫感がそうさせるのだろうか。ただそれが幕府の権威確立に大きく寄与したのも事実で、「理想的な2代目」という印象。他にも鉄砲による狩りが得意だったというのは意外であった。秀忠に似て万事ソツのない一冊。2020/03/03
フランソワーズ
7
初期徳川本では、家康存命の頃はあらゆる事柄に秀忠独自の言葉(書状等)や動向が窺えないので、当たり前ですがこの本は貴重です。そして家康没後の秀忠は、彼の個性・人間性が一挙に出てきた(良くも悪くも)。制御する者がいなくなったことで、硬化しやすくなり、処断が多くなった。そこには秀忠の臆病な気質と劣等感とが、根本にあったように思えます。2021/10/01
アメヲトコ
7
2020年2月の『徳川家康』に続き、3月刊。ある意味『家康』とは好対照で、読み物としては圧倒的に面白いです。関ヶ原の心の傷を引きずり、ときに短慮や冷たさを見せる場面がありながらも、堅実に幕府の基礎固めを行うという人物像が巧みに描かれます。刊行日が10日で逝去が29日、まさに最後の力を振り絞って執筆されたのでしょう。ご冥福をお祈りいたします。2020/09/28
ktf-tk
3
徳川秀忠は大河ドラマ「葵徳川三代」の印象が強く、なんとなく好きな歴史上人物。関ケ原の大遅刻や愛妻家という偉大な人物だけれど、人らしさがとても出ていていい。けれど、人物叢書で著すとどうしても、秀忠の残念さが多分に出ていて、著者は秀忠があまり好きではないなという印象を受けた。政治史の流れの中では、家康や家光がメインで描かれていて、誰を著した本だろうかということを感じざるを得なかった。「秀忠がしたこと」という形での史料が少ないのか、二元政治の場面も秀忠がしたことをもっとクローズアップできないものか・・・。2020/05/24
パスカル
1
家康と家光に挟まれ、どうしても地味な存在の秀忠に焦点をあてた一冊。これといった武功がないからか、どうしても処断が苛烈になってしまうのは仕方ないところなのかな。とはいえ、家康の跡を継いで支配体制の土台を固めていったところなんかは、もっと評価されてもいいと思う。2021/09/25
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